犬の白内障
今回は加齢とともに発症率が高い白内障についてコメントさせていただきます。
最近特に、眼が白く感じるといって来院される患者様が多いように感じます。
早くに見つければ内科的治療で、ある程度の進行を遅らせることが出来ます。
白内障の原因は未だ明らかになっていません。
先天性のものと後天性のものがあります。
特に後天性の白内障には老齢性、糖尿病性、内分泌性、外傷性、中毒性などがあり、そのほか遺伝によって6歳以前に見られる若年性のものもあります。
眼球の中のレンズ(水晶体)は65%の水分と35%の蛋白を含んでおり、この蛋白が何らかの原因で変性を生じてレンズの透明性が維持できなくなり、最終的に濁りが生じます。この状態を白内障と呼びます。
白内障は病状と症状により以下に分類されます。
1:初発期 水晶体の一部に混濁の始まる時期で視力は正常。
2:未熟期 混濁は水晶体のほとんどに広がり、光を当てると水晶体がグレーから白くなってみえます。
この時期に緑内障を併発することもあります。
3:成熟期 水晶体全体が完全に混濁し、不透明で固くなり全盲になります。
4:加熱期 水晶体が硬化乾燥し、水晶体が脱臼します。
以上に上げた病期、特に初発期に愛犬の症状に気付かれる飼い主様は非常に少ないです。
犬は一部の犬種を除いて、基本的に視力は弱く、優れた嗅覚と聴覚でカバーしています。
よほど注意深く気をつけて見ていないと眼の異常は見落としてしまいます。
下の写真は白内障成熟期のラブラドル・レトリバーおよびミニチュア・ダックスです。
白内障の治療は内科的療法(薬物治療)と外科的療法とあります。
内科的療法は、現在のところ特効薬といえる薬はありません。
一旦、水晶体が混濁すると吸収されることは少なく、思いのほか薬物療法の効果は期待できません。
外科的治療で水晶体を摘出する方法や超音波で水晶体核を粉砕して吸い出す超音波白内障乳化吸引法などがあります。
手術後の視力は正常より低くなりますが、視覚的には何ら問題なく生活できます。
外科手術はコストが非常にかかる点から、ヒトのように広く普及はしていません。
いずれにせよ、老齢性白内障や遺伝性白内障については予防法はありません。
水晶体に濁りを見つけたら、速やかに動物病院を受診してください。
早期発見により、薬物療法で白内障の進行を遅らせることは可能です。