ウスタレカメレオンのヘミペニス脱
哺乳類のペニスは、排尿と生殖機能を兼用しています。
一方、爬虫類のペニスはヘミペニスと呼ばれ、生殖機能のみを果たします。
排尿は総排泄口から糞と一緒に排出されます。
カメレオンを飼育する上で、以前ご紹介しました直腸脱以外にヘミペニス脱という疾患があります。
直腸脱と異なり、このヘミペニス脱は所定の場所に完納することが難しく、苦労することが多いです。
今回ご紹介させて頂きますのは、はるばる三重県からお越しいただきましたウスタレカメレオンのジミー君です。
ウスタレカメレオンは別名ジャイアントカメレオンとも呼ばれ、世界最長のカメレオンです。
最長80㎝くらいまで体長が達する個体もいるそうです。
そんなジミー君ですが、数日前からヘミペニスが脱出して戻らなくなったとのことで来院されました。
黄色丸で囲んだ部分が脱出したヘミペニスです。
実はこのヘミペニス、カメレオンは左右に1本づつあります。
今回脱出しているのは左側のヘミペニスとなります。
下写真の黄色矢印と青矢印で示す箇所にヘミペニスが1本づつ出てくるとイメージして下さい。
脱出したヘミペニスを戻そうと懸命に努力をいたしましたが、ヘミペニスを傷つけるばかりで戻すことが出来ません。
このまま脱出した状態が続きますと、ヘミペニスは重度の浮腫となり、最悪壊死し始めます。
樹上で生活するので、樹皮に患部をこすり付けて感染症になる可能性も大きいです。
飼い主様ともよくよく話し合い、この脱出したヘミペニスを切除することにしました。
左側ヘミペニスを切除しても右側が残ってますから繁殖には支障はありません。
生殖器なので当然血流も多く流れています。
最小限の流血で留めるために電気メスでカット・凝固を繰り返して切除します。
切除したヘミペニスが黄色丸で示しています。
切除したヘミペニスの付け根を縫合して終了です。
加えて、脱出したヘミペニスの反対側(右側)のヘミペニスから下の写真の物体が採れました。
形状はグミのようでもあり、植物のようでもあり不思議な物体です。
皆様、これが何かお分かりになりますか?
実はこれはカメレオンの精子が固まったもので、交尾の際に雌の体内に押し込まれるとそれが原因で死亡するケースもあるそうです。
爬虫類特有のこれらの事象は興味深く、かつ驚かされることがあります。
ジミー君、大変な一日でしたが早く良くなって下さいね。