外耳炎によるフレンチブルドッグの耳血腫(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
以前、犬の耳血腫についてその外科的アプローチをご紹介させて頂きました。
詳細はこちらをクリックして下さい。
暑い日が続いています。
こんな時期は皮膚病について多いのが外耳炎です。
定期的に外耳道をクリーニングしているワンちゃんはあまり関係ないかもしれませんが、耳掃除の習慣が無かったり、暫くして無かったりすると外耳炎になりやすいです。
特に垂れ耳の傾向のワンちゃんに多い外耳炎ですが、痒みを強く伴いますので一生懸命に耳を引掻いたりすると、耳介軟骨内の血管が破たんして、耳血腫を発症します。
今回、ご紹介するのはフレンチブルドッグのボス君(4歳10か月、去勢済)です。
左の耳が腫れているとのことで来院されました。
右耳は下写真のようにスッキリしています。
ところが、左耳はこのように腫れている(下写真黄色丸)のがお分かり頂けると思います。
側面を見ますと耳介が腫脹しています。
この状態は耳血腫という、耳介軟骨の血管が破たんして耳介に血腫が生じたものです。
よくよく外耳道を診ますとしっかり外耳炎になっており、外耳道はキャラメル状の耳垢と滲出液が貯留していました。
外耳炎の治療も耳血腫治療と並行して実施する必要があります。
以前、犬の耳血腫のコメントで耳血腫が高度に進行した場合の手術法を載せましたが、今回の耳血腫はまだ初期のステージです。
耳介内の貯留した血液を注射器で吸引することとします。
貯留していた血液は7mlほどでした。
耳はこれで一旦はスッキリしているように見えます。
一旦、貯留した血液を全量吸引できたとしても、数日内にまた血液は貯留します。
何度か血液吸引を繰り返して収束していくレベルと思われます。
耳介の中心部には耳介軟骨が存在します。
この耳介軟骨の内部には軟骨洞と呼ばれる微細な袋状があり、この洞内には毛細血管が密に走行しています。
耳介部に耳を引掻くとか、頭を振るといった物理的な振動が加えられると耳介軟骨に亀裂・分離が生じ、洞内血管が出血を来して血腫が形成されると考えられています。
血腫の程度が酷くなるほどに耳介軟骨は変形していき、耳介部がカリフラワー状になってしまうこともあります。
耳の変形はルックスに大きな影響を及ぼします。
立ち耳が垂れ耳になったりします。
血腫が出来たなと感じたら、速攻で受診して適切な治療を受けて下さい。
結局、ボス君は血液吸引を2,3日おきに4回繰り返して完治しました。
耳介部の変形も最小限にとどめることが出来、外耳炎も完治しました。
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったらこちらをクリックして頂けるとブログ更新の励みになります。