こんにちは 院長の伊藤です。

ハリネズミの人気は5,6年前から急上昇し、当院ではすでにフクロモモンガやフェレットを引き離す勢いを見せています。

そんなハリネズミですが、腫瘍の症例が年々増えてます。

本日、ご紹介しますのは乳腺腫瘍です。

犬猫の乳腺腫瘍の外科的摘出は当院のホームページを参照して頂きたいのですが、ハリネズミのそれにあっては体の面積と比較して乳腺が大きいため摘出が比較的苦労する点、術後患部

が癒合不全に至るケースがある点で注意が必要です。

ヨツユビハリネズミのみんとちゃん(雌、2歳8か月、体重630g)は左下腹部に腫瘤を認めて来院されました。

患部を針生検して細胞診を検査センターに依頼したところ、化膿性炎症があり、その一方で腫瘍細胞は検出されませんとの報告でした。

細胞診の結果を鵜呑みにしてしまうと腫瘍が後ほど発覚したとき、摘出手術のタイミングを見逃してしまう事があります。

細胞診はあくまで腫瘍と思しきエリアを穿刺して、針の中に吸引された細胞一つ一つで評価されます。

たまたま腫瘍細胞を吸引することが出来なかった場合も想定しなくてはなりません。

飼い主様の了解のもと、最終的には私の直感で外科的に摘出することにさせて頂きました。

イソフルランガスを麻酔導入箱に流し込みます。

麻酔が効き始めて、丸まっていたみんとちゃんは体を開け始めました。

麻酔導入が完了したところで、箱から出てもらい維持麻酔に移します。

下写真の黄色丸が腫大している乳腺部です。

モニターの電極を装着して、手術を開始します。

患部は、出来る限りマージンを取れるだけ取る方針で切開ラインを入れます。

バイポーラ(電気メス)で止血をしながら腫瘍を摘出して行きます。

下写真の矢印が乳腺部を示します。

出血を避けるためにバイポーラを多用して大小血管を止血・切開していきます。

太い血管については、バイクランプでシーリングをします。

腫大している乳腺を摘出した後、その乳腺より下方にもう一つの乳腺が存在していました。

こちらも合わせて摘出します。

これで腫大していた乳腺の摘出が完了しました。

思いのほか大きな皮膚の欠損部となりました。

なるべく皮膚の縫合部に緊張を加えないようにするために吸収糸で皮下組織を縫合します。

皮下組織の縫合が終了しました。

皮膚縫合します。

これで手術は終了です。

大きな皮膚欠損でしたが、縫合はスムーズに出来ました。

縫合部が外陰部(排尿する部位、黄色丸)に近いため、尿が患部に飛散するかもしれません。

ちなみに肛門が赤丸で示しています。

後は時間と共に縫合部が開かないのを祈念します。

術後の皮下輸液を実施します。

麻酔覚醒直後のみんとちゃんです。

翌日には食欲も戻りました。

今回、摘出した腫大した乳腺組織です。

病理検査に出しました。

結論は浸潤性充実癌(中等度悪性)との病理医の診断でした。

下写真は低倍率画像です。

腫瘍性上皮細胞の増殖境界不整な浸潤性増殖像が観察されます。

高倍率の画像です。

異型腺上皮細胞が細胞シート状・細胞塊状増殖しています。

結果として、外科的に摘出できたのは良かったと思います。

今後は付属リンパ節や遠隔転移がないか要経過観察となります。

術後2週間目のみんとちゃんです。

抜糸のために来院されました。

傷口はこんな感じです。

みんとちゃんの経過は良好です。

みんとちゃん、お疲れ様でした!

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