猫の下部尿路疾患(序章 排尿障害)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、猫の下部尿路疾患(FLUTD)です。
FLUTDは頻尿、血尿、排尿困難、不適切な排尿、部分的または完全な尿道閉塞といった臨床徴候が一つ以上認められる疾患を指します。
アメリカンショートヘアのデュオ君(6歳、去勢済、体重6.9kg)は尿が出ないとのことで来院されました。
実はデュオ君は以前、当院のHPで猫の尿石症の表題でご紹介させて頂いた子です。
その詳細について興味のある方はこちらをクリックして下さい。
デュオ君はストラバイト尿石症を2歳の頃から患っていました。
治療・予防として、発症から尿石予防の療法食を継続してずっと給餌して頂いてました。
定期的に尿検査も受けて頂いていたのですが、今回ばかりはデュオ君の全身状態が良くありません。
嘔吐、脱水の症状が認められます。
血液検査を実施したところ、BUN132mg/dl(正常値の上限36.0mg/dl)CRE9.2mg/dl(正常値の上限2.1mg/dl)という急性の腎不全、尿毒症を疑う状態です。
尿道カテーテルをペニスから挿入を試みましたが、旨く入りません。
一旦、超音波で膀胱の状態を確認して、下腹部を注射針を穿刺して採尿して、膀胱圧を下げて尿道カテーテルの再度挿入を試みます。
エコーで膀胱を確認します。
エコーの画像です。
下写真は、膀胱内の尿を穿刺吸引した途中のものです。
最初に吸引した時は、高度に膀胱が尿で膨満していました。
黄色矢印は、膀胱内に漂っている剥離した膀胱粘膜です。
膀胱壁も肥厚してます。
膀胱穿刺している模様です。
吸引した尿は明らかな血尿です。
取れるだけ尿を吸引した後に尿道カテーテルの挿入は出来ました。
採尿した尿を顕微鏡で確認した写真です。
明らかなストルバイトの結晶が認められます。
高倍率の写真です。
このストルバイト結晶は、マグネシウムの結晶体ですから、ガラスの破片の様に膀胱壁を傷つけて出血を引き起こしています。
膀胱内を生理食塩水で洗浄します。
膀胱内の浮遊している蛋白のゴミやストルバイトの結晶を洗い出しして掃除をします。
尿道カテーテルからある程度の排尿が復旧しましたので、腎不全対策に点滴を実施します。
排尿が尿道カテーテルから確実に行われたら、点滴を集中して行いBUNやCREの値を下げて行きます。
デュオ君は血圧も下がっていますので、頭側皮静脈に留置針を皮膚を切開して留置しました。
しばらく輸液療法と膀胱洗浄で治療を行いました。
その後、デュオ君は腎不全から回復し元気になりました。
この処置でデュオ君の排尿障害は治ったかに見えたのですが、その後も度々排尿障害を繰り返すことになります。
結局、外科的に恥骨前尿道造瘻術をこの2か月後に行うことになりました。
恥骨前尿道造瘻術の詳細については、こちらをクリックして下さい。
その模様を次回のブログでご報告します。
猫はこの尿石症関連で苦しむケースが多く認められます。
迅速に対応して、排尿を復旧させないと尿毒症に至り死亡する場合もあります。
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