こんにちは 院長の伊藤です。

毎日、暑い日が続いています。

このひと月の間、下痢をして来院されるワンちゃん達が増えています。

夏は細菌性下痢の発症例が多いです。

本日は細菌性下痢の中でも一般的に多いクロストリジウム下痢についてコメントさせて頂きます。

トイ・プードルのキイナちゃん(5歳、避妊済)は先日から水溶性下痢・血便が続くとのことで来院されました。

腹痛も伴っているようで、触診しますと腹筋をしぼって下腹部を硬直させています。

お持ちいただいた便は血便(下写真黄色丸)を伴った下痢便です。

ゼリー状の粘膜も便と共に排出されています。

お食事中の読者の方は申し訳ありません。

早速検便をしました。

検便をすることで糞便中の腸内細菌の動向が確認できます。

細菌性下痢であれば、その原因が判明することも可能です。

下写真は低倍率です。

よくよく見ますと特徴的な細菌が出ています。

下は高倍率の写真です。

黄色丸で囲んであるのは芽胞菌といわれるクロストリジウム菌(Clostridium perfringens)です。

クロストリジウムは桿菌と呼ばれる、さおのような棒状の細菌です。

このさおの端の部分に丸い気泡のようなものが付いています。

これが芽胞と称される菌体を保護するカプセルのようなものです。

芽胞菌で有名な菌に破傷風菌があります。

土壌中に芽胞菌は存在することが多く、菌体を取り巻く栄養状態が悪い時は、この芽胞が菌全体を包み込んで休眠状態に入ります。

破傷風菌は数十年にわたる休眠が可能とされます。

そして、自己増殖出来るほどに環境の栄養条件が整うと、芽胞は小さく菌体の端あるいは中央部に収納され、活動開始するというシステムです。

クロストリジウム(Clostridium perfringens)は大型の嫌気性グラム陽性菌ほとんどの犬・猫の腸管内に正常に存在します。

そしてこのクロストリジウムはトキシンA、トキシンB、バイナリートキシンという毒素などを産生します。

この毒素により腸粘膜が破壊され、急性出血性下痢が引き起こされます。

検便時に顕微鏡下(油浸レンズ)で1視野中にクロストリジウムが5個以上確認されたら、クロストリジウムに起因する腸毒素原性下痢と診断されます。

キイナちゃんはこのクロストリジウムによる下痢であることが判明しました。

クロストリジウム下痢は、アンピシリンやアモキシシリン・クラブラン酸などの内服1週間ほどで治療できます。

また脱水を防ぐために十分な水分補給と高繊維の食餌で対応します。

早くクロストリジウムを叩いてお腹の痛みが無くなりますよう、内服頑張っていきましょうね!

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