犬の肛門を正面にとらえて時計方向で、4時と8時方向に肛門嚢という袋が存在します。

この部位は肛門腺臭腺などと呼ばれています。

肛門腺は分泌液を分泌します。

この分泌液はかなり匂いがきつく、ジュータンや畳にこの分泌液をこすり付けられると匂いを取るのに苦労します。

今回はこの肛門腺が炎症を起こし、肛門嚢が破裂してしまった症例です。

ミックス犬のメメちゃん(6歳、雌)はお尻から血が出ているとのことで来院されました。

下写真黄色丸の部分から血膿が出ています。

見るからに痛々しい状態です。

メメちゃんもお尻を気にして、患部を舐めようとしたり床にお尻をこすり付けてます。

破裂した肛門嚢は汚臭を放ち、炎症の進行を物語ってます。

まずは肛門嚢を絞って、おそらく貯留しているであろう反対側の分泌物を出します。

汚泥状の異臭を放つ分泌液と出血が認められます。

早速、破裂した肛門嚢を洗浄消毒します。

しっかり洗浄したところで、患部は縫合して閉じたりせず、解放創のまま自然に癒合するのを待ちます。

初期のステージであれば、問題なく破裂した肛門腺は再生します。

その間は抗生剤をしっかり内服してもらいます。

しかし、しっかり治療しておかないと何度もこの後、再発を繰り返してしまいます。

状況によっては、外科的に摘出する場合があります。

以前に外科的に摘出した症例を載せましたので、興味のある方は こちらをクリック して下さい。

肛門腺から続く導管が肛門括約筋の左右につながって肛門内側に開口しています。

大型犬はこの導管が太く、排便時に便と共に排出されます。

しかしながら、導管の細い小型犬では簡単に排出することは不可能です。

加えて、ストレス・加齢・肥満などの要因が分泌液の性状をより粘度の高いものにし、肛門嚢に過剰に貯留していきます。

この状態が長引くと細菌が導管から、肛門嚢内に侵入して肛門嚢炎を引き起こします。

犬自身からすれば、肛門周囲が非常にむず痒くなるため、何とかして患部をこすったり、舐めたりします。

結果、今回のメメちゃんのように肛門嚢が破裂して皮膚に穴が開いてしまうのです。

重要なポイントは、日常の肛門腺のチェックです。

月に一回は肛門腺を絞って貯留した分泌液を出すようにして下さい。

飼い主様自らできると良いのですが、難しい場合は病院で絞ってもらうようにして下さい。


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