ウサギキュウセンヒゼンダニ感染症の治療経過とウサギ蟯虫症
先日、ご報告させていただいたウサギキュウセンヒゼンダニの治療報告です。
足裏に痂皮(かさぶた)ができ、非常に痒がるため来院されたウサギ君ですが、この痂皮の中にウサギキュウセンヒゼンダニがしっかり見つかりました。
その時の写真がこれです。
黄色丸で囲んだ部位が痂皮を形成しているのが分かると思います。
セラメクチンを投薬して1週間後にお越しいただいた患部の写真は次の通りです。
赤丸で囲んだ部位をご覧ください。
セラメクチン投薬前(黄色丸)に比べて、痂皮が無くなりすっきりしているのがお分かり頂けると思います。
あらためてセラメクチンの効果を実感しました。
加えて、排便した糞便にウサギ蟯虫(Passalurus ambiguus)が排出されました(黄色矢印)。
虫体は5~10㎜くらいです。
今回、排泄された虫体はすべて死んでいました。
ついでにこのウサギ蟯虫は雌で子宮内に卵をたくさんを持っていました。
虫体があまりに大きいので顕微鏡写真をつなげてみます。
このウサギ蟯虫はウサギの盲腸と結腸に寄生します。
蟯虫はウサギの肛門まで出てきて、肛門周囲の皮膚に産卵をするという変わった産卵法をとります。
排泄時に虫卵が便の表面に付着して、他のウサギへの感染源となります。
あるいは、ウサギが自分の肛門周囲を舐めて再感染することもあります。
さいわいなことに、この蟯虫に感染しても無症状ですむことが殆どです。
成長期のウサギの場合は、増体が悪かったり毛艶が悪くなったりはあるようです。
一般的には、駆虫にパモ酸ピランテルやイベルメクチンが使用されます。
今回は、ウサギキュウセンヒゼンダニの駆虫のために使用したセラメクチンが蟯虫を駆逐してくれたと思われます。