肺と言いう臓器は、血液中のガス交換をする重要な役割を担っています。

肺を絶えず血液が巡るということは、血中に腫瘍細胞が流出したら、肺に至る確率は極めて高いということです。

特にウサギの場合、雌は乳癌、子宮腺癌になることがあり、二次的に肺に腫瘍が転移するケースを多く診てます。

実際、ヒトの場合もそうでしょうが、ウサギにしても肺腫瘍となると完治することは至難です。

本日、ご紹介しますミニウサギのクロ君は一時的なてんかん発作を起こしたとのことで来院されました。

呼吸が浅いという事、前肢を立てたままの状態でいることから呼吸が辛くなっているだろうと判断しました。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

黄色丸で囲んだ肺野が白く点々が入っているのがお分かりいただけたでしょうか?

さらに患部を拡大します。

特に上写真では心臓のシルエットも見にくくなるくらい肺野に多数のX線不透過の結節が認められます。

先に述べましたように、雌であれば乳癌、子宮腺癌がらみの腫瘍転移はありですが、クロ君は雄です。

クロ君を診る限り、体表部に腫瘍は認められません。

また他の箇所もレントゲンを撮影しましたが、腫瘍を疑わせる所見はありませんでした。

となると、肺がこの腫瘍の原発巣となるのでしょうか?

ウサギの肺原発性腫瘍は極めてまれな症例と言われています。

クロ君の腫瘍のステージはかなり進行しており、末期に至っていると思われました。

出来うることは対症療法となります。

流動食で最低限の体力は維持してもらい、内科的治療で呼吸を楽にし、疼痛管理をするという形になります。

飼い主様の意向もあり、しばし当院のICUに入院して頂き、治療をさせていただきました。

40%の酸素濃度で管理されたケージ内で、呼吸は安定しているかに見えたのですが、残念ながら翌日に逝去されました。

ウサギの胸腔の狭さと呼吸不全については、度々コメントさせて頂いてます。

ウサギの肺野が一旦、炎症を起こすと慢性化するケースが多く、治療・管理は大変となります。

呼吸が荒い、口で呼吸をしている等の症状が見られたら、早めの受診を強くお勧めします。

今回のクロ君は、どんな腫瘍なのかも特定できないままの急展開でした。

力及ばず、非常に残念です。

合掌

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肺腫瘍に侵されると肺はこんなに白くなってしまうのかと思われた方は、
 

 
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