犬の縫合糸反応性肉芽腫
縫合糸反応性肉芽腫って何?
なんだか舌を咬みそうな病名ですが、つまるところ手術で使用した縫合糸に由来する体の炎症反応を指します。
7,8年くらい前から業界紙にも報告されており、当院でも2005年には他院からの紹介例を手術しています。
去勢・避妊手術で使用した糸(特に絹糸)に敏感に反応して、炎症反応を示します。
糸の周辺を取り囲むように肉の組織(肉芽組織)が包み込み、状況によっては内部の漿液が皮膚に穴をあけ、漏出します。
この症状が治療しない限り、ずっと続くのです。
ただこの縫合糸反応性肉芽腫という病名すら確立されたものではなく、原因や発生メカニズムも全然わかっていません。
これまで、私が執刀した患者でこの病気になられたケースは幸い1例もありませんが、他院もしくは動物保護センターで去勢手術を受け、その後、この病気になって当院の診察を受けたケース(再手術を含めて)は4件ほどあります。
またこの病気の特徴は発症する犬種のほとんどがミニュアチュア・ダックスフントであることです。
私が診た患者も全てミニュアチュア・ダックスフントでした。
肉芽腫の中に縫合糸が入っている場合は、比較的術後の経過は良好でした。
でも糸が見つからないケースは、プレドニゾロンやシクロスポリンによる内科的治療で炎症を抑えています。
今回、写真で紹介するのはダックス君で、他院で去勢手術を受けた後、陰のうにろう管(トンネル)を生じジュクジュク炎症が続く症例です。
陰のう内の肉芽組織を出来うる限り摘出し、縫合糸を含んだ組織(精管周囲)を確認しました。
その後、ステロイドの内服を続け、現在のところ症状は落ち着いています。