犬の帝王切開
最近では、雄雌のカップルを飼育させて自宅で繁殖するという飼い主様は減っているようです。
自家繁殖はカップルの相性もありますし、状況によっては帝王切開しないと出産出来ない場合もあります。
あるいは出産した仔犬たちを皆世話できなくて、里親さんを探すけれどなかなか見つからない、といった場合もあるでしょう。
自家繁殖でそのようなリスクを冒すよりは、新たに別の犬をペットショップで購入される方が圧倒的に多いですね。
7,8年前までは夜中や明け方に呼び出されて帝王切開をよくしましたが、ここのところめっきり手術依頼も減っていました。
そんな中で先日、帝王切開を実施したケース(チワワのキティちゃん)をご紹介します。
飼い主様が是非、キティちゃんの血筋をつなぎたいとのことで交配されました。
お腹が随分、大きくなってから来院されました。
出産が近づいているようなのでレントゲンを撮りました。
ちょっとわかりずらいかもしれませんが、赤ちゃんが5匹おり、うち4匹は逆子で正常位は1匹のみという状態です。
初産であり、逆子が多いとなると難産の可能性は高いように思われました。
どのような時に帝王切開が必要か、そのタイミングが重要です。
母犬の側からみたポイントは以下の通りです。
1:陣痛が微弱(出産の予定日なのに陣痛が来ない!)
2:陣痛が起こって2時間たっても分娩されない。
3:胎盤が剥離して緑色の分泌液が陰部から漏出してる。
4:破水があって90分経過しても胎児が出てこない。
5:全頭出産が終了するのに4~6時間以上の時間がかかっている。
他にもありますが、詳細は成書をご覧ください。
直腸の体温測定を一日に何回もしていただき、37℃をきるようなら24時間以内に分娩がおこると思ってください。
1週間以上前から体温計をお渡して、飼い主様にも確認をしていただきましたが、いよいよ陣痛が起こって、私どもで分娩を看取ることとなりました。(飼い主様も初めてのことで随分不安な様子です。)
陣痛が起り、ほどなく1匹目を出産しようとしましたが、うまく分娩できず本人もパニックを起こし、出てきた赤ちゃんを噛み殺してしまいました。あっという間のことで非常に残念です。
2匹目の分娩に時間がかかりそうでしたので、速やかに帝王切開を行いました。
下の写真はこれから帝王切開する直前のものです。
帝王切開時の注意点は麻酔薬の選択と麻酔深度の調整です。
特に母体のみならず胎児にまで麻酔が深く及びますといわゆるスリーピングベイビーとなり、覚醒に苦労します。
ドプラン(呼吸促進剤)を臍静脈から注射して呼吸できるようになった仔もいますが、ほぼ4匹そろって産湯と皮膚へのマッサージで産声が聞こえました。
ほっとする瞬間です。
赤ちゃん達のお世話はスタッフにまかせて、私は子宮の縫合をします。
ほどなく赤ちゃん達も母犬の母乳を求め始めますので、お母さん犬のそばに移動します。
いつも帝王切開をして思うのは、母は強しということです。
浅めに麻酔をかけられ、覚醒したら痛いお腹はそのままで赤ちゃん達に初乳を与えなくてはならず、ゆっくり休むこともままなりません。
その後の話となりますが、赤ちゃん達はすくすくと成長を続けています。
キティちゃんも術後の経過も良好でしっかり、お母さんをしています。
キティちゃん、お疲れさまでした。