プレーリードッグの腹壁ヘルニア(受難その1)
プレーリードッグは皆さんご存知のように検疫上の問題で、2003年に輸入禁止となり、今ではなかなか見かけることも少ないリス科の齧歯類です。
性格的には人懐っこい所がある一方で、発情期にはかなり攻撃的な個体も多いです。
今回、ご紹介するのは、腹壁ヘルニアといってお腹の筋肉の一部が裂けて、そこから腹腔内の内臓や脂肪が脱出する疾病を指していいます。
このオグロプレーリードッグ君(以下プレーリー君)は下腹部の背中側に腫瘤が出来て来院されました。
細胞診で脂肪腫の可能性が高く、試験的に開腹することとなりました。
電気メスで患部を整理していきますと、何やら背筋に裂け目が生じており、そこから腹腔内の脂肪が飛び出していることが判明しました。
上の写真の黄色の丸で囲んだ箇所がその裂け目(ヘルニア孔)です。
このヘルニア孔をしっかり縫合して、穴埋めをしてから皮膚を縫合して事なきを得ました。
患部を齧れないように、また緊張のかかる場所なので皮膚の結紮力を高めるためにステンレスワイヤーで縫合しました。
プレーリーは激しい動きをしますので、たとえば回し車で遊んだりとか他の個体と遊んだりした折に、たまたま筋肉が断裂を起こしたのかもしれません。
患部を保護するため、エリザベスカラーを利用することは多いのですがプレーリーの場合は、カラーのストレスで食欲減退、攻撃力増強などのマイナス面が多く、一旦何もつけずに退院して頂きました。
もとより体型的な問題(洋ナシ型体型)のため、カラーを簡単に外してしまう事もあり、プレーリーの術後管理の悩みの種でもあります。
このまま皮膚が治癒するまで、おとなしくしていれば何も問題はなかったのですが。
これから、プレーリー君の受難が始まります。(とは言っても自分で招いた受難ではあるのですが。)
続きは次回のブログで。