ナナクサインコの脱羽
本日、ご紹介させて頂くのはナナクサインコのカンちゃんです。
ナナクサインコはオーストラリアに棲息するインコです。
成鳥では赤、白、黄色、黄緑から青、黒と体の部分ごとにカラフルな体色をしています。
ご興味のある方は是非、一度インターネット等で検索してみて下さい。
カンちゃんはまだ生後5か月齢なので体色は朱色から赤・白が主体です。
カンちゃんは最近、脱羽が著しいとのことで来院されました。
保定している間だけでも黄色丸のように羽が抜けます。
脱羽の原因は様々です。
1:季節性の換羽
2:ストレス性の自咬症
3:外部寄生虫(トリヒゼンダニ)の感染
4:ウィルス性疾患
① PFBD (Psittacine Beak and Feather Disease)
circovirusが原因とされる感染症です。
脱羽、羽毛形成不全、嘴の過長、肝機能低下、免疫低下を来し急性例では死亡するケースもあります。
現在治療法は確立されていません。確定診断は遺伝子検査(PCR)を実施します。
② BFD (Budgerigar Fledgling Disease)
Papovaviridae Polyomavirus が原因とされる感染症です
生後10~25日令の幼鳥で致死的な経過をたどります。
治療法は免疫賦活を目的とした対症療法となります。
確定診断はクロアカスワブの遺伝子診断(PCR)を実施します。
5:食餌のバランス不足
6:肝臓疾患
7:内分泌系の異常
色々な原因が考えられますが、カンちゃんの臨床症状からはウィルス性疾患の可能性は低いです。
自咬症では翼の内側あたりを嘴で突っついた出血斑が認められることが多いのですが、それもありません。
また皮膚検査で外部寄生虫は陰性です。
肝臓疾患や内分泌系の異常は血液検査が必要ですが、犬猫で必要とされる採血量は鳥では不可能です。
加えて、一般の血液検査を受けてくれる検査センターもありません。
以上の点から残るは季節的換羽か食餌のバランス不足と思われます。
特に生後6か月令のカンちゃんはまだヒナ時代の終わりに近づいていると思われます。
いわゆるヒナ換羽と呼ばれるステージで成鳥の仲間入りをする段階に来ていると考えられます。
さらに冬に向けての衣替えで季節的換羽もダブルで来ています。
この時期にご注意いただきたいのは、換羽でタンパク質を必要とする時期なので、食餌のシードはタンパク質を多く含んだものを与えていただくと良いです。
冬に備えてしっかり暖かい羽毛で体をガードして欲しいですね。