サザナミインコのそ嚢炎
そ嚢とは、鳥における食道が部分的に拡張した器官を指していいます。
このそ嚢は、餌を一時的に溜める機能を持っています。
本日ご紹介する そ嚢炎は、このそ嚢が炎症を起こした状態を言います。
そ嚢炎に罹患するとどんな症状が出るのか?
まず、強い嘔吐が認められます。
その気持ち悪さによって、顔を左右に振り、そ嚢内の内容物を嘔吐します。
ケージには、嘔吐物が付着して鳥の顔面は汚れます。
さらにゲージに嘴をこすりつけたり、水をたくさん飲むようになります。
食欲が低下し始め、体力が消耗し、羽毛を丸め、止まり木にも止まれなくなり、落鳥に至りますと死亡するケースもあります。
そ嚢炎の原因は、細菌・真菌・寄生虫の感染によることが多いとされます。
次いで異物等の摂取によって発症することもあります。
来院されたのは、サザナミインコのヒナ君です。
羽色はコバルトで綺麗な青ですね。
南米の山岳地帯に生息するインコで、そのカラーバリエーションはグリーン、ルチノー、ターコイズ等多種に及びます。
ヒナ君は頻発する嘔吐で食欲不振も伴い、辛そうな様子です。
早速、そ嚢検査を実施しました。
そ嚢内に滅菌綿棒を挿入(下写真参照)して、そ嚢の内容物をスライドガラスに塗沫標本を作ります。
塗沫標本の顕微鏡写真は以下の通りです。
そ嚢の上皮細胞が剥離しており、細胞内に多数の細菌が入り込んでいるのがお分かりになると思います。
下の写真で細菌を黄色丸で囲みました。
そ嚢炎の治療法ですが、そ嚢粘膜保護剤・嘔吐止めを初めとして、原因に応じて抗生剤、抗真菌剤、駆虫薬を投薬します。
さらに食欲不振が続くならば、栄養剤やリンゲル液で補液を行います。
幸いなことにヒナ君は処方した薬(抗生剤、粘膜保護剤)が功を奏して、1週間後に来院された時にはそ嚢内の細菌数もかなり減り、食欲も増進して回復されました。
そ嚢炎が原因で死亡するケースは比較的多いです。
まず頻発する嘔吐が認められたら、速やかに受診されることをお勧めします。
犬や猫よりも小鳥は、食欲不振になってからの展開が非常に早く、対応を誤ると衰弱死する可能性が高いです。