犬の異物誤飲(その8)吐いていただきます!
異物誤飲については、これまで犬の疾病のコーナーでいくつかの症例を上げてコメントさせて頂きました。
そのほとんどが、誤飲した異物の外科的摘出をテーマとしたものです。
でも実際、当院では外科的摘出は最終手段であり、でき得る限り催吐処置をして自力で吐けるものは吐いていただいています。
勿論、どんなケースでも異物誤飲であれば嘔吐させればよいというものではありません。
以下の4点を満たしている時に催吐処置を実施します。
1:異物を摂取したことが明らかであること。
2:異物誤飲から1時間以内であること。
3:異物の大きさが、嘔吐させたときに食道を閉塞するような大きさでなく、十分に小さいものであること。
4:全身状態が良好であること。
催吐剤(嘔吐をさせる薬)としては、一般家庭でも用意できるのがオキシドール(過酸化水素水)と飽和食塩水です。
飽和食塩水は、食塩中毒を起こす可能性があるため、お勧めできません。
オキシドールは薬局で購入することが可能で、傷口消毒用3%前後のもので良いです。
犬の体重1kgあたり1~2 mlの原液を飲ませます。
このオキシドールにしても安全というわけではなく、胃粘膜障害や催吐作用による循環器系への抑制が見られることがあります。
ですから、夜中と外出先とかで緊急処置で必要な場合を除いては、動物病院で催吐処置を受けられることを強くお勧めします。
本日、ご紹介するのはのトイプードルのカレンちゃん(8か月令)です。
飼い主様の化粧用パフを30分ほど前に誤飲したとのことで来院されました。
早速、オキシドールを飲んでいただきました。
飲んでほんの数分で嘔吐が始まりました。
激しい嘔吐と共にパフ(黄色矢印)がしっかり出て来ました。
お食事中の方、申し訳ありません。
白い泡の胃液と黄色の胆汁を合わせて出てきたパフです。
オキシドールは胃内で発泡して嘔吐を促しますので、この処置後には胃粘膜保護剤を投薬するようにしています。
ちょっとだけスッキリしたような表情のカレンちゃんでした。
異物誤飲は100%飼主様の責任であることを認識して下さい。
数度にわたって、催吐処置をしても嘔吐できなければ外科的に摘出するしかありません。
一度、異物誤飲した子は何度も繰り返すケースが多いのも事実です。
よくよくご注意のほどお願いします!