プレーリードッグの炎症性肉芽腫
プレーリードッグは、当院では10年前まで、フェレットに並んで来院数の多かったリス科の動物です。
検疫上の問題、歯芽腫(オドントーマ)の問題などで減少を続け、現在国内では希少種とされています。
今回は、当院のプレーリードッグの中でも最高齢といえるハナちゃん(雌、10歳)をご紹介します。
ハナちゃんは陰部周辺が2年以上前から炎症を起こし、その都度、抗生剤を処方してきました。
しかしながら、良くなったり悪くなったりを繰り返して完治に至っていません。
それというのも自傷行為が背景にあり、患部がどうにも気になってしまうためです。
加えて10歳の現在、下写真の矢印に示すように白内障も成熟期まで進行しています。
下写真の黄色丸の箇所が腫脹している陰部周辺です。
今回は今まで以上に患部の腫脹が著しいとのことで来院されました。
実は、この腫瘤は外陰部と肛門の傍らに位置しており、これらを隠してしまうくらい大きなものです。
これまでは、この位置を自分で咬んで、皮膚炎を起こしている程度でした。
しかし、これくらいの大きさになりますと腫瘍の可能性も考えて細胞診を実施することとしました。
上写真は細胞診の結果です。
多数の好中球と類上皮細胞が混在して認められます。
腫瘍細胞は認めらず、炎症性肉芽腫という病変であることが判明しました。
プレーリードッグの自傷行為は、徹底しています。
強靭な切歯を用いて患部を自咬しますと、皮膚は容易に欠損して、修復のために肉芽組織を形成します。
細菌が、その肉芽組織に侵襲しますと炎症はさらに進行し、状況に応じて過剰な肉芽が増生されます。
患部が自傷行為の対象にならないように防御できれば良いのですが、プレーリードッグには難しいでしょう。
患部を外用消毒や抗生剤・抗炎症剤の投与で治療していく方針です。
なるべく患部を気にせずに生活して下さい。
ハナちゃん、宜しくお願いします!