ウミネコの受難
年の瀬も押し迫ってきました。
当院も毎年のことですが、急患やら休日診療でバタバタする時期です。
ところで皆様はウミネコをご存知ですか?
ウミネコはチドリ目カモメ科カモメ属に分類される鳥類です。
ロシア、中国、台湾、朝鮮、日本と分布しており日本で棲息するウミネコは日本に周年生息(留鳥)します。
冬季に移動するのは、北海道や本州北部で繁殖する個体のみです。
集団繁殖地(コロニー)を形成することで有名です。
当院の開業している地域が海に近い所もあって野鳥、特に海鳥がらみの急患があります。
本日、ご紹介しますのはおそらく交通事故に遭遇したと思われるウミネコです。
たまたま道端でうずくまっているこのウミネコ君を見つけた方が当院を受診されました。
余談になりますが、ウミネコとカモメの違いをご存知ですか?
ウミネコは嘴が黄色で先端部が黒、さらに最先端部には赤斑があります。
カモメの嘴は同じ黄色ですが、下嘴の先端部のみが赤斑です。
ミャーミャーと甲高い猫を思わせる鳴き声がウミネコの特徴です。
このウミネコ君を詳しく身体検査をしたところ、嘴が割れ、左翼骨折、左脛骨骨折が認められました。
野鳥であることからまずは応急処置をほどこし、保護された方に県の野鳥管理事務所を紹介させて頂きました。
体幹部の左側に強い力が加わっての受傷ですから、おそらくは車にはねられたのでしょう。
嘴です。
黄色丸の箇所が割れています。
左翼です。
触診しますと左橈骨が骨折しています。
左脛骨が骨折しており、体を荷重することが出来ません。
まずは翼(橈骨)をテーピングして胸部と固定させます。
呼吸は安定しているのでテーピングによる呼吸抑制はないと判断しました。
ウミネコ君は疼痛のため、大暴れします。
まだ若い個体と思われますが、力は思いのほか強く、スタッフにしっかり保定させての処置となりました。
次に左脛骨ですが、熱可塑性キャスト剤のレナサームで外固定することとしました。
羽がギプス固定の邪魔をしますので剃毛します。
熱湯で加熱して5分もするとレナサーム(黄色丸)は硬化し始めます。
処置はこれで終了です。
抗生剤と鎮痛剤を注射しました。
あくまで応急処置ですが、この状態で経過をみて野鳥管理事務所へお連れ頂くこととしました。
残念ながらこのウミネコ君は3日後に急逝されたとの連絡を受けました。
受傷後の野鳥の保護管理の難しさを改めて感じました。
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