ハリネズミにも腫瘍はあります。

特に有名なのが扁平上皮癌という悪性の腫瘍です。

この扁平上皮癌は顔面や口腔内に発生することが多く、特に口腔内にできると摂食行動が制限されるため飼主様が強制給餌をするなどして介護してあげなくてはなりません。

本日は、この扁平上皮癌についてのお話です。

ヨツユビハリネズミのマロン君(5歳5か月、雄)は左上顎の歯茎が腫れているとのことで来院されました。

下写真の黄色矢印と黄色丸の部分が腫れて口がしっかり閉まらないのがお分かり頂けると思います。

マロン君自身もこの腫れている箇所が気になるらしく、自分で引掻いたりして出血も認められます(下写真黄色丸)。

実際、ヒトに馴れているハリネズミは少なく、口の中を探査することも容易ではありません。

まだマロン君は検査に協力的です。

早速、患部を針生検することにしました。

細胞診することで腫瘍なのか、あるいは他に原因があるか判明します。

採取した細胞を染色したのが下の写真です。

細胞質が青く好塩基性に染まり、核が濃縮・不整形の扁平上皮細胞がたくさん認められます。

残念ながら、扁平上皮癌と診断しました。

腫瘍治療の第一選択は外科手術です。

マロン君の場合、口腔内の腫瘍でしかも歯茎の中に浸潤していますので外科的摘出は不可能です。

犬の扁平上皮癌はシクロオキシゲナーゼ2(COX2)を発現しており、このCOX2を標的にする非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)による治療が有効であるとの報告があります。

以前、リチャードソンジリスの扁平上皮癌についてコメントしました。

ジリスにNSAIDであるピロキシカムを投薬しての効果を期待しましたが、残念ながら発症から死の転帰までが早くその効果を確認することが出来ませんでした。

今回は、飼主様の了解をいただきこのピロキシカムの投薬を開始しました。

加えて、食餌が自身でうまく食べられないため、飼主様に高カロリーの経口栄養食を飲ませて頂くこととしました。

今後のマロン君の経過を引き続き報告させて頂きたいと思います。

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