犬の肥満細胞腫(その3)
院長の伊藤です。
体調を崩して1週間ほど入院し、先日退院することが出来ました。
入院中は患者様に大変ご迷惑をおかけいたしました。
FacebookのHPにも励ましのメールを読者の皆様からたくさんいただき、ありがとうございました。
開業以来、十数年にわたり定休日以外は休むことなく頑張ってまいりましたが、だんだん無理の効かない年齢になってきたようです。
今後、自己の健康管理をしっかり行い、診療業務に邁進致しますのでよろしくお願い致します。
さて、本日ご紹介させて頂きますのは以前にもコメントしたことのある肥満細胞腫です。
肥満細胞腫は犬猫ともに発生率の高い皮膚の悪性腫瘍です。
発生は皮膚・皮下組織が発生率が一番高く、約90%が単発です。
肥満細胞腫は、その外観が発生部位によって多様な形状を示すことから “偉大なる詐欺師” と称されています。
過去の私の経験からもこの肥満細胞腫は直径5㎜位のものがわずか1か月で4~5cmまで大きくなったりしますので注意が必要です。
一般の飼主様にあっても、触って何かしこりがあるなと思われたら病院でしっかり確認して頂けると良いと思います。
ミックス犬のマロちゃん(雌、10歳8か月、体重20㎏)は左大腿部に大きなしこりが出来たとのことで来院されました。
下写真の黄色丸で囲んだ部分が腫瘤を示します。
約7㎝四方のものです。
早速、細胞診を実施しました。
良く見ますと、細胞質に細かな顆粒を持つ核が大小不同の細胞(肥満細胞)がたくさん認められます。
下写真は拡大した写真です。
検査に出したところ、肥満細胞腫のGradeⅡに相当するとのことでした。
現時点で腫瘍部が大きいため、外科的切除をするためには、マージン確保が非常に困難です。
腫瘍7㎝となりますと大きく組織を切除しなくてはなりませんので、ひとまずステロイドを術前投薬することとしました。
ステロイドの効果で腫瘍が小さくなってくれたら、そこでマージンも大きく取ることが可能です。
マージンが確保できれば、切除後の腫瘍再発も抑えることが出来るでしょう。
しばし、ステロイド内服を続けて頂いたマロちゃんです。
腫瘍の大きさが約1㎝に縮小しました。
ここで腫瘍摘出手術を実施することとしました。
マージンを2㎝は十分に取ることが出来そうです。
慎重に電気メスで皮下組織を切開剥離していきます。
摘出した腫瘍です。
皮下組織から筋膜にかけ、腫瘍細胞が存在していると思われる部位はメスで削ぎ落としていきます。
今回のマロちゃんの場合、筋肉内の腫瘍の浸潤は認められず筋膜を切除する程度で終了することが出来ました。
皮下組織を死腔の生じないように縫合します。
最後に皮膚を縫合して終了です。
マロちゃんは術後の経過もよく2日後に退院されました。
今後は肥満細胞腫の再発がないように定期的にチェックが必要です。
マロちゃん、お疲れ様でした!
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