新米獣医師カーリーのつぶやき-part67~薬剤耐性~-
こんにちは、獣医師の苅谷です。
GWも終わりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしたでしょうか?
私は実家に帰省してBBQを楽しんできました。
ただ天気はあまり良くなかったですが・・・(^-^;
今回は薬剤耐性菌についてお話しします。
以前抗生剤についてで少し触れましたが、薬剤耐性菌とは抗生剤といった化学物質が効かなくなる微生物たちのことを示します。
細菌による感染症に罹ってしまった時に抗生剤を投薬することで細菌を死滅させ、感染症は治っていきます。
微生物の種類によってその微生物自体の構造や構成、どこで増殖するかといった特性によって種類の抗生剤が無効であったりする場合はありますが、その微生物の特性に最も適した抗生剤を選択することにより効果が出てきます。
このように元から持っている薬剤に対する耐性よりも問題となってくるものは元は持っていなかったけれども後で手に入れた薬剤耐性です。
これには大きく3パターンあります。
一つは抗生剤そのものを不活化(無害なものにする)してしまうものです。
これは私たちの高等生物において薬剤や有害物質が入ってきたときに体外にその物質を出そうとした時に肝臓や腎臓で行われていることです。
体に影響ある物質を外に出すために備わっている機構で微生物である細菌たちも生き残るために全く同じことを行います。
薬剤耐性菌が生まれるにあったってよく見られる機構となっています。
二つ目に抗生剤の効く部分を変えてしまうことがあります。
そもそも薬の効く場所はどう決められているのかというと「鍵と鍵穴の関係」に例えられます。
鍵が鍵穴にぴったりと合わさることで効果を発揮します。
鍵となる薬が鍵穴となる場所(この場合微生物の増えるため必要な部分)にぴったりと合わさらなければ微生物は無関係といわんばかりに生き残ります。
こういった機構はウイルスが耐性を持つときによく認められます。
三つ目は微生物の内部から外部へ抗生剤を排出するポンプ(手段)の獲得です。
一つ、二つのポンプの増加であれば抗生剤の種類を変えることで対応することが可能ですが、このポンプの種類の数が増えてくると抗生剤が効きにくくなってきます。
こういった耐性機構が一種類の微生物だけで留まっていればよいのですが、他の種類の微生物に伝播していくことがあるため現在薬剤耐性菌として問題となってきます。
この問題は特に細菌で問題となります。
耐性機構の設計図は耐性遺伝子として細菌の中では自身の生きていくのに必要な遺伝子の他にプラスミドというところに格納されています。
この耐性遺伝子の格納されているプラスミドによって薬剤耐性が細菌間を伝播していきます。
このプラスミドは生き残るための細菌たちの情報交換の手紙みたいなものとなっています。
そもそも抗生剤を使用していない自然な条件でも薬剤耐性菌は一定数発生します。
また、このような薬剤耐性菌は突然変異であり、現在の環境に適した細菌らに生存競争に負けて淘汰されています。
しかし、抗生剤などで今まで優勢だった細菌らが弱まり、薬剤耐性菌の勢力が優勢となって数が増えてきます。
体の免疫でこの薬剤耐性菌たちの増殖を抑えれればよいのですが、増殖してしまうと効く抗生剤が減ってしまったり、他の耐性を持たない細菌たちにプラスミドの伝播の確率が上がり、新たな耐性菌を生み出してしまう可能性があります。
このような耐性菌の出現があるため、抗生剤は必要な場合において必要な期間を考えて処方していますが、薬を飲み忘れたり、良くなってきたから薬を止めたりすると目的の病原菌を叩きれなくて耐性菌を生んでしまう原因になり得る可能性があります。
抗生剤を飲んでいる場合は特別な指示がない限り、途中で止めたりしないでください。
今回は以上で終わります。
もしよろしければ
こちらのクリックをよろしくお願いします。