犬の脂肪腫
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは犬の皮下腫瘍の中でも最も一般的に遭遇する脂肪腫です。
脂肪腫は加齢や肥満と共にその発症頻度は増加して行きます。
顎下、腋下や胸垂や内股などに出来やすいように思います。
脂肪腫は良性の腫瘍で特に外科的に摘出する必要はありませんが、時と場合によっては摘出しないと生活の質が大幅に低下するケースがあります。
足の運行が脂肪腫によって妨げられて、普通に歩行が出来なくなったりする場合や側臥状態で寝ることが出来なくなったりする場合がそれに当たります。
イタリアングレイハウンドのケビン君(去勢済 14歳)は左の腋下から胸部にかけての腫瘤が1年くらいかけて次第に大きくなったとのことで来院されました。
細胞診したところ、明らかな脂肪腫でした。
しかし、かなりの大きさであるため歩行のバランスが取れなくなってきているとのことで、飼主様から外科的摘出の希望がありました。
腋下は太い血管や神経が集まっています。
加えてケビン君は14歳という高齢犬です。
慎重に手術を進めなくてはなりません。
血液検査等ケビン君の全身状態は良好でした。
早速、全身麻酔を施します。
イソフルランのガス麻酔も効き始めて来ました。
患部の剃毛に移りました。
スタッフの片手で余るくらいの大きさであることがお分かり頂けると思います。
下写真黄色丸の部位が脂肪腫を示します。
写真では、なかなかその大きさを表現するのが難しいです。
10cm×10cmは余裕である大きさです。
イタリアングレイハウンドのスマートな体格には余分な脂肪です。
皮膚を切皮します。
腫瘍は体幹皮筋の下にある深胸筋の真下に存在しています。
筋膜を切開して、脂肪腫にアプローチします。
何本も太い血管が走行してますので、電気メス(バイポーラ)で凝固・切開します。
脂肪腫の基底部を拳上するとさらに太い血管が走行しています。
これだけの大きさの腫瘍ですから、栄養血管も太いものが張り巡らされています。
バイクランプで栄養血管をシーリングします。
バイクランプは瞬間的に血管をシーリング出来ますので時間短縮に貢献できます。
従来は一本づつ縫合糸で結紮してました。
シーリングとメス切開を繰り返して、だんだん腫瘍の全容が判明してきました。
腫瘍は、私の片手では持ち上げることが難しい位の大きさです。
無事、腫瘍を摘出できました。
摘出後の患部です。
特に不正出血もありません。
切開した筋膜を縫合します。
最後に皮膚縫合します。
大きな腫瘍でしたが、皮膚のテンションをそれ程かけなくても縫合できたのは幸いです。
覚醒し始めたケビン君です。
摘出した脂肪腫の全容です。
重さは800gありました。
下写真は皮膚の直下側です。
こちらは筋肉層に接していた脂肪腫の裏側です。
個人的には、あまり脂肪腫を外科的摘出はしません。
今回のような事例は少ないですが、比較的短期間で急に増殖が進行するケースはあります。
再度、この摘出した腫瘍を検査しましたが脂肪腫でした。
ケビン君はこれで気持ちよく疾走することが出来るようになると思います。
ケビン君、お疲れ様でした!
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