こんにちは 院長の伊藤です。

犬の瞬膜(第三眼瞼)の中に存在する瞬膜腺が、何らかの原因で脱出する疾病を瞬膜腺脱出と言います。

脱出した瞬膜腺の外貌からチェリーアイとも呼ばれます。

多くは1歳未満で見られます。

片側性で起こることが多いとされます。

好発犬種としてアメリカン・コッカ―スパニエル、イングリッシュ・ブルドッグ、ビーグル、シーズー、ペキニーズ等が挙げられます。

瞬膜腺脱出は現在、外科的整復が推奨されています。

本日はこの外科的整復手術をご紹介します。

トイプードルのあんこちゃん(8歳4か月、避妊済)は2歳くらいから瞬膜腺脱出になりました。

特に外科的処置は施さずに点眼などで対応し、現在に至ってました。

今回、飼い主様より外科的整復処置を希望され、手術を行うこととなりました。

下写真黄色丸が脱出した瞬膜腺です。

早速、全身麻酔を行います。

麻酔が十分かかったあんこちゃんです。

こうしてみると瞬膜腺は大きく脱出しているのがお分かり頂けると思います。

患部を拡大しました。

瞬膜腺脱出整復手術にはいくつかの術式が報告されています。

今回はポケット法(埋没法)を採用しました。

このポケット法は年を取ってから発症したり、慢性化した瞬膜腺脱出例に推奨される術式です。

あんこちゃんは発症してから6年近く経過していますので、瞬膜軟骨が変形している可能性があります。

その分、手術の難易度は高くなります。

簡単にイラストでこの術式を説明します。

開眼した状態で、瞬膜を鉗子で牽引します。

脱出した瞬膜腺の左右粘膜を約1cm切開します。

両側の切開創の粘膜下層を剥離して、粘膜の切開創を5-0吸収糸を用いて連続縫合します。

では、実際の手術で解説します。

開瞼器で開眼させ、瞬膜を鉗子で牽引します。

下写真にある赤い突出物が脱出した瞬膜腺です。

この瞬膜腺を上下に挟む形で1cmずつの切開ラインを入れます。

瞬膜は血管が豊富に走ってますから、それなりの出血はあります。

止血用スポンジで効率的に止血して行きます。

瞬膜腺の反対側にも切開ラインを入れます。

5‐0吸収糸で粘膜創を連続縫合して行きます。

綿棒で瞬膜腺を圧迫して切開ラインで形成された空間へ埋没させます。

綿棒で圧迫している間、連続縫合を速やかに行います。

瞬膜腺をもう一息で埋没させることが出来そうです。

縫合糸が体毛より細いため見づらいかもしれませんが、下写真で縫合ラインが認められると思います。

これで完成です。

突出していた瞬膜腺が治まったのが分かります。

まだ半覚醒のあんこちゃんです。

覚醒したあんこちゃんですが、出血と患部の腫脹が若干認められます。

術後はしばらく点眼薬で経過を見て行きます。

さて、手術後2週間経過したあんこちゃんです。

脱出した瞬膜腺は綺麗に治まり、眼元もすっきりしてますね。

少し瞬膜軟骨も変形していましたが、ポケット法で上手く埋没できた良かったです。

飼い主様的にはペットの外貌が大きく変わりますので、とても気にされる方が多いです。

以前はこの脱出した瞬膜腺を切除していた時代(1980年代)もありましたが、瞬膜腺が涙液フィルムなどの重要な機能を持っていることが判明しました。

ゆえに、瞬膜腺は必ず整復して治してあげるようにして下さい。

あんこちゃん、お疲れ様でした!

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