ヒョウモントカゲモドキの脱皮不全
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの脱皮不全についてです。
ヒョウモントカゲモドキはヤモリと同じ爬虫類の仲間です。
インドやパキスタン、アフガニスタンに分布しており、体表は小さい黒斑で覆われて豹(ヒョウ)を思わせることからヒョウモンとの名がつけられています。
海外ではLeopard Gecho(レオパルドゲッコー)と呼ばれ、爬虫類マニアからはレオパと略称されてます。
成熟個体では体長25㎝前後、体重60g前後、寿命は10年以上とされています。
そんなヒョウモントカゲモドキですが、脱皮時に脱皮不全を起こし来院されるケースが増えています。
脱皮が近づくと皮膚全体が白くなり、鼻先から脱皮が始まります。
脱皮は最終的に指先まで皮を自身ではずし、食べてしまう事が多いです。
ただ、個体によっては上手に脱皮できなくて問題が起こります。
脱皮不全が起こりやすいのが、指先と瞼です。
指先の皮膚が脱皮不全が起これば、指先に残った皮が乾燥して指先に食い込んで血行障害を招き、最終的に指先が壊死を起こして指が脱落してしまいます。
瞼の場合は脱皮不全の瞼の裏側の皮膚が外れずに残り、乾燥した皮が硬化して眼球に食い込んで開瞼できなくなります。
結局、眼が見えなくなりますので生餌を捕食することが出来なくなります。
脱皮不全と油断していると命を落とすことになりますので大変です。
ヒョウモントカゲモドキのケニー君(性別不明、3歳4か月)は左瞼をばっちり開くことが出来なくなりました。
瞼が開かなくなる時は、勿論、眼球の炎症や角膜損傷が関与してることもあります。
瞼を開けて、まずは眼球の状態を把握することから始まります。
すでに体表が脱皮を始めているのであれば、瞼の脱皮不全が関与してる可能性が高いと思って下さい。
ケニー君は体表がうっすらと白く皮膚が変化していますから脱皮が始まっていました。
瞼を開けてみると、脱皮不全の皮が眼球の上に一枚残っているのが分かります(黄色矢印)。
生理食塩水で眼球を十分に洗浄し、残った皮を柔らかくした上で眼科用のピンセットでゆっくりと剥がしていきます。
思いのほか、厚い皮で伸縮性があります。
これだけ分厚い皮が瞼の内側に残存していたら、眼球を圧迫して痛かったと思われます。
眼球がやっと見えて来ました。
皮を摘出後、ケニー君は少し開眼することが出来るようになりました。
さすがに疲れた様子のケニー君ですが、これで目の痛みから解放されると思います。
次にご紹介する瞼の脱皮不全はぽてとちゃん(雌、2歳)です。
ぽてとちゃんは両眼とも目が開かないとのことで来院されました。
両眼とも開けることが出来ない状態です。
食餌も取れない状態が何日も続いています。
先ほどのケニー君と同様、瞼を開けて確認したところ、やはり脱皮不全でした。
生食で洗浄し、綿棒と眼科ピンセットで優しく残皮を剥がしていきます。
ぽてとちゃんの場合は瞼の裏側を内貼りするように残皮が張り付いていました。
眼球を取り囲む感じでリング状になった残皮を摘出しました。
反対の右眼も同じく、処置して行きます。
こちらもリング状に残皮が取れました。
下写真は両眼から剥がした脱皮不全の残皮です。
摘出するとすぐに乾燥して、これが眼球を締め付けていると思うと脱皮不全とは大変な疾病であると思います。
ぽてとちゃんは残皮を摘出直後から瞼を開けることが出来るようになりました。
ぽてとちゃん、お疲れ様でした!
しっかりと食餌を摂って下さいね。
爬虫類にとって、脱皮不全は命を奪うケースもあります。
脱皮を円滑に出来るようにするためには、飼育環境の湿度管理を初めとして、シェルターなどの設備を整えて下さい。
食餌の栄養学的バランスも考慮して頂く必要があります。
カルシウムに加えてビタミンやミネラルを十分に与えることも脱皮を円滑にするために必要です。
もし、脱皮不全を認めた時はぬるま湯で温浴をしてあげて下さい。
残皮が容易に剥がせないなら、爬虫類を診ることのできる獣医師の診察を受けて下さい。
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