犬の異物誤飲(その19)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、犬の異物誤飲の症例です。
当院のHP上に犬の疾病で異物誤飲シリーズを載せています。
今回は19回目の異物誤飲紹介となります。
犬がどんな異物を誤飲するかを皆様に知って頂き、誤飲予防の一助になればと思います。
柴犬の豆太君(2歳5か月齢、去勢済、4.3kg)はおやつ用のペーストを塗りつける芯棒(スティック)をかみ砕いて誤飲してしまったとのことで来院されました。
約4㎝位のプラスチック製の芯棒とのことです。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
レントゲン写真の黄色丸が胃を示します。
特に下写真の側臥像で胃内(黄色丸)の横に波線の入った異物が存在しているのがお分かり頂けると思います。
今回、誤飲したと申告のあった異物の形状に非常に酷似してます。
異物の大きさから恐らくは十二指腸まで降りることは不可能です。
結局、胃を切開して異物を摘出することとなりました。
豆太君を全身麻酔します。
剣状突起直後から臍までをメスで正中切開します。
切開線直下に胃が垣間見えます。
胃を牽引したところです。
胃内には硬い異物が触知できます。
下写真のとおりに胃の漿膜面(外側部)に異物の波状の横線が浮かび上がって描出されています。
レントゲンで撮影した通りの長軸が4㎝位の異物です。
胃体部で血管走行の少ない部位にメスを入れます。
メスを入れた部位から外科鋏で胃の漿膜・筋層・粘膜面(全層)をカットしていきます。
胃の創面部を鉗子で優しく把持し広げます。
胃内に黄色を帯びた異物が認められます。
当初、簡単に摘出できると見積もっていたのですが、胃の粘膜面に異物のヒダが食い込んで、思うように摘出が出来ません。
なるべく胃の切開ラインは広げることなく異物を取り出したいのですが、力を加えて牽引すると胃が裂けそうな感じです。
時間を掛けながら、慎重に少しづつ異物を胃内から引き出しました。
やっと摘出出来ました。
次に胃の閉鎖を行います。
胃切開した部位は二重縫合で閉鎖します。
私の場合、まず第一層目は単純連続縫合を行います。
下写真がその単純連続縫合です。
漿膜、筋層、粘膜下織まで全層貫通して針を入れます。
単純連続縫合が終了したところです。
次に第二層目は、結節レンベルト縫合を実施します。
漿膜・筋層までに針を入れて縫合します。
これで胃の閉鎖は終了です。
二重縫合法は創部の止血・漿膜の接着に優れているとされます。
合成吸収糸で腹膜・筋肉層を縫合します。
最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。
これで豆太君の手術は終了です。
全身麻酔から覚醒したばかりの豆太君です。
スティックに塗布するペーストがおいしくて、スティックの先端部をまるごと噛み切って誤飲したようです。
この異物のヒダ状の形状もあって、胃の粘膜面にしっかり食い込んでいました。
早急に胃切開で摘出できて良かったと思われます。
下写真が摘出した異物です。
綺麗に洗浄した後の異物です。
豆太君は経過良好で1週間後に退院されました。
術後2週間目に抜糸で来院された豆太君です。
異物誤飲は飼主様の責任です。
異物をペットの口の届く場所の置かないこと、摂食する機会をなくすことを心がけて下さい。
当院の患者様で、異物誤飲で3回摘出手術を実施したケースがあります。
豆太君、お疲れ様でした!
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