新年、明けましておめでとうございます。

こんにちは 院長の伊藤です。

昨年は当院にとって、変革の年でもありました。

コロナ対策として、受付で対面での接客を回避するために自動釣銭機を導入しました。

加えて、ソトマチいうシステムを導入しました。

これは、人工知能(AI)受付・自動呼出しシステムで、LINE画面上で待合状況の確認、受診の順番が来たら飼主様への自動呼出しをします。

また、当院からの情報発信を当院HPと連動して、LINEのアプリから行います。

今後も、飼主様に気軽にご利用して頂ける病院を目指して行きますので、宜しくお願い致します。

さて、本日ご紹介しますのはヨツユビハリネズミの骨肉腫です。

本来、骨育種は骨に発生する悪性腫瘍ですが、今回ご紹介するのは下腹部の皮膚に出来た骨肉腫です。

ヨツユビハリネズミの骨組織に発生する骨肉腫については、報告例も多いのですが、骨以外の組織での発生例は希少です。

現時点で、この骨外性骨肉腫の論文上での報告例は、世界規模でまだ1例(Phair et al, 2011. Journal of Exotic Pet Medicine, 20, P.151-154)しかありません。

ヨツユビハリネズミのあずきちゃん(雌、4歳、体重363g)は、下腹部の腫瘤がだんだん大きくなってきたとのことで来院されました。

下写真黄色丸がその患部です。

発生部位が乳房に近いため当初、乳腺腫瘍を疑いました。

細胞診をするにも興奮して丸くなるため、安全な針穿刺は困難です。

結局、腫瘍の可能性があり、まだ摘出するのは問題の無い大きさであるため、外科的摘出を実施することとしました。

全身麻酔を実施します。

イソフルランで麻酔導入が完了したアズキちゃんです。

維持マスクに切り替え、生体情報モニターの電極を装着します。

乳房の近くに発生しているのがお分かり頂けると思います。

患部周囲を剃毛、消毒します。

麻酔状態も安定してきました。

これからメスで患部の切除を実施します。

出来る限り患部周囲のマージンを広く取るようにメスを入れて行きます。

乳房周囲は血管が多く走行しており、電気メス(バイポーラ)を使用して止血しながら切除します。

患部の皮膚を牽引しながら、腫瘤を剥がしていきます。

乳腺腫瘍と異なり、乳腺全体が腫脹したり、血行障害の所見はありません。

無事、腫瘤を摘出しました。

摘出した患部です。

思いのほか、広範囲に摘出したため、縫合時に緊張(テンション)が強くかかります。

対策として、皮膚と皮下組織を鉗子で鈍性に剥離します。

縫合法は水平マットレス縫合法を選択しました。

この縫合法は、組織にかかる圧迫力を分散させる縫合法で、単純結紮縫合と比較して縫合糸による組織の裂開の危険性が少ないです。

これで縫合は完了です。

維持麻酔を切り、覚醒し始めたあずきちゃんに皮下輸液を行っているところです。

麻酔を切ってから約5分ほどで覚醒しました。

さて摘出した腫瘤ですが、検査センターの病理医からは前述の通り、骨外性骨肉腫の診断でした。

下病理写真は中等度の倍率像です。

黄色矢印は腫瘍細胞間に形成された類骨基質です。

最終的には、この腫瘤内に骨組織を形成する(骨芽細胞への分化を示す)悪性間葉性腫瘍であるとのことです。

この腫瘍細胞に高度な異型性や浸潤性が確認されることから悪性腫瘍と診断され、病変が骨組織との連続性を有していないため骨外性骨肉腫と診断されました。

下写真は、高倍率像です。

高度に異型性を示す紡錘形腫瘍細胞の錯綜状増殖像で構成されています。

以前、ブログで報告させて頂いたハリネズミの肥満細胞腫(興味のある方はこちらをクリックして下さい)の時も2017年当時でまだきわめて少数例の報告しかされていませんでした。

ヨツユビハリネズミは腫瘍が本当に多い動物種ですが、今後も積極的に治療実績を増やして行きたいと思います。

あずきちゃん、お疲れ様でした!

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