こんにちは、獣医師の苅谷です。

獣医師の指示なく、同様の症状だからといって以前処方され余っていた薬を投薬する、似たような症状だから薬を処方されたペットとは他のペットに薬を投薬するといった事例がありました。

以前薬の話をさせていただいたこともありましたが、薬品は使い方次第で、病気に対して治療薬にも体に対して毒にもなります。

場合によっては取り返しのつかないことになってしまうため、絶対にやめてください。

今回はまた薬について話します。

何点か例を挙げていきます。

まず一つ目は鎮痛剤や消炎剤といった痛みを緩和させてあげる際に使う薬があります。

そのペットにあった体重通りであれば、体から痛みをとってくれる薬ですが、痛みをとるだけではなく、体の胃の粘膜を保護する機能を抑えてしまい、胃が荒れてしまいます。

またこの薬はステロイド剤と併用してしまうとよりひどく副作用が出てしまいます。

二つ目は抗生剤です。

抗生剤と呼ばれるものは細菌を倒す抗菌剤と真菌を倒す抗真菌剤があります。

抗生剤を用法を守らずに服用してしまうと以前も取り上げましたが、しっかりと症状が治りきらなかったり、薬剤耐性菌が出現してしまったりします。

また抗生剤は細菌や真菌を倒す薬であるため、誤った使い方をするとお腹の腸内細菌叢を壊してしまい、嘔吐や下痢といった消化器症状が出てしまうことがあります。

抗生剤にはたくさん種類があります。

その種類によって皮膚なのか、消化器なのか、呼吸器なのか選択する種類が変わります。

また動物種によって、特にウサギをはじめとした草食動物になってくると腸内の細菌叢がとても大事になってきます。

そのため大事な腸内細菌を倒してしまう抗生剤は使用できず、使用すると命を落とします。

三つ目として挙げられるものとして肝臓や腎臓に病気がある場合、健常なペットと同じ用量でも想定以上の効果が出てしまうことがあります。

摂取した薬はその効果を体の中で発揮すると同時に体外に排出するために肝臓や腎臓にて代謝されて体外に排出されていきます。

そのため症状が同じだからと言って肝臓や腎臓が悪いこに対して同じように薬を投薬すると体外への薬の排出が遅れるため、必要以上の薬が体の中に残っている状態が続きます。

過剰量の薬が体内に残っているということは上記で話した通り、薬が毒に変わるため、副作用が強く出てしまいます。

この場合、獣医師の判断で通常より薬を減量したり、肝臓や腎臓に負担のかからない薬を選択します。

上記のことを考えて獣医師は薬を処方しています。

飼い主様の主観で、ペットの体調がよくなったため、薬を飲み切らずに残ってる薬を、いつか使えるだろうと残しておいく場合があります。

長期間残しておいた薬を、同じ症状が出てきた時に再度飲ませている飼い主様がいます。

胃薬や痒み止めといった獣医師より頓服用としてそのペット用に処方されている薬なら問題はありません。

多頭飼いで同じ症状が出たときに薬を処方されたペットと違うペットに与える場合は、予期せぬ反応が出てしまう可能性があります。

特に小型の小動物になってくると薬の量が少量になるため、体重より必要な薬の量を粉にして分包して処方しています。

繰り返しますが、獣医師の指示がない限り、処方を受けたペット以外に薬を与えることはやめてください。

下手すると命に関わります。

処方された薬は用法用量を守ってくださいね。

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