セキセイインコの腹水症について紹介させて頂きます。

腹水とは腹腔内に液体が溜まる現象を指します。

貯留する液体によって、炎症性と漏出性に分かれます。

液体の比重を測定することで判定します。

炎症性の液体は滲出液といい、卵性腹膜炎で多く生じます。

一方、漏出液は比重が低く、水の比重1.00に近い値を取り、心疾患や肝臓疾患に由来することが多いです。

セキセイインコのチーちゃんは、お腹に水が溜まったとのことで来院されました。

止まり木に止まるのも辛そうな感じです。

下写真の黄色丸をご覧ください。

鳥は犬猫と違って、腹水がたまりますと重力の関係で下腹部に大きな腫瘤ができます。

ここ最近まで、チーちゃんは連続して産卵をしていたそうです。

その後、短期間でこのように腹水が貯留したという経過です。

産科系(卵巣・卵管系)の問題かもしれないと考えられました。

全身状態も思わしくないため、積極的に腹部エコーを撮るのは控えました。

ただ腹水の量が多いため、本人の負担にならない範囲で腹水を吸引するすることとしました。

下腹部に検耳鏡のライトを当て腹水の貯留している部位を確認して、注射針で穿刺します。

下写真のように水が貯留している部位は、赤くライトで映し出されます。

上写真のように注射針から腹水が滴下してきました。(黄色矢印)

注射筒で吸引した方が速いのですが、急激に吸引しますと血圧低下によるショックを招くことが多いので、今回はゆっくり自重滴下で抜去していきます。

思いのほか貯留していた腹水は多く、約5mlほどありました。

さらに吸引することは可能でしたが、全体貯留量の半分ほどで留めました。

腹水の比重を測定したところ、1.008と低く漏出液であることが判明しました。

自分の予想では、卵胞嚢腫ではないかと考えられました。

卵胞内に多量の液体が貯留する疾患です。

エコーの確認をしてませんので確定はできませんが、心疾患・肝疾患も絡んでいるかもしれません。

いずれにせよ、多少チーちゃんは少し楽になったようです。

内服薬を処方して、1週間後に再診を受けていただきました。

下写真が1週間後のチーちゃんです。

元気な時と変わらない位、状態は良くなったとのことです。

下腹部は黄色丸にあるようにとてもスッキリしています。

この状態で腹水が溜まらなければ大丈夫ですが、確定診断できてませんので要経過観察です。

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