インコに比較的多い疾患に腹部ヘルニアがあります。

これは、何らかの原因で腹筋が裂けてしまい、腸腹膜や腸腹腔内容物が皮下に脱出して、袋状のヘルニア嚢ができる疾病です。

その状態は、腹部の中央部が下に向かって突出したように見えます。

本日ご紹介しますオカメインコのモカちゃんは、以前からこの腹部ヘルニアがあったのですが、どうも総排泄口から卵管が飛び出したとのことで来院されました。

よくよく見ますと卵管脱ではなくて、腹部の皮膚から腹筋が裂けて腸が脱出している状態です。

すぐに腹部を縫合しなくてはならない事態でした。

早速、全身麻酔を施します。

下写真の黄色丸が脱出してしまった腸です。

すでに色は黒ずんでおり、床面との干渉や自咬等の可能性もあります。

下写真の黄色丸が総排泄口(肛門)で赤矢印が脱出した腸です。

この脱出した腸の2か所が裂けており、そこから糞便が出ているのが判明しました。

この部分を吸収性縫合糸で縫合します(下写真黄色矢印)。

次に裂けている腹筋と脱出した腸とが癒着している部分がありましたので、薄皮を剥がすようなタッチで鉗子で剥離していきます。

剥離がうまくできた所で腸を綺麗に洗浄して、腹筋と皮膚を縫合します。

上写真が皮膚縫合が完了したところです。

見た目、腹部が突出しているのがお分かり頂けると思います。

今回の原因となった腹部ヘルニアは整復できませんでしたので、以前からの腹部下垂(突出)状態はそのままです。

可能であれば整復したかったのですが、腸の損傷もありヘルニア孔をトリミングできませんでした。

全身麻酔の覚醒も問題なく手術は完了しました。

あとは患部が床面との接触による干渉を防ぐために、床材を衛生的なテッシュペーパーやシーツで統一していただき、自咬に注意が必要となります。

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