こんにちは 院長の伊藤です。

鳥の疾患の中で内分泌が関与していると思われる症例は多いです。

しかしながら、犬猫のように血液検査でホルモン定量したりすることもできず、あくまで全身状態・臨床症状で判断しなければならない症例が多いのも事実です。

本日は、そんな鳥の内分泌性疾患の中で甲状腺腫をご紹介します。

十姉妹のブラウンちゃん(2歳,雌)は呼吸が苦しそうとのことで来院されました。

口を大きく開けて苦しそうな呼吸をしています。

鳥は平常時に鼻呼吸を行っていますが、十分なガス換気が出来なくなると開口呼吸を始めます。

これは、非常に危険なサインです。

触診で全身をチェックしたところ、頸腹部が腫脹しているのが確認されました。

甲状腺腫大が認められる点から甲状腺腫を疑いました。

既に触診をしている状態で、ブラウンちゃんは眼をつむり辛そうな症状です。

本来ならば、ここでレントゲン撮影を実施するところなんですが、呼吸が整うまでインキュベーター(保温器)に入れて、経過を観察することにしました。

しかしブラウンちゃんの呼吸不全は、改善することなく虚脱状態に陥り倒れてしまいました。

その後酸素吸入を施しましたが、残念ながらブラウンちゃんは逝去されました。

診察開始から10分と経たない内での展開でしたが、ブラウンちゃんの病状は思いのほか進行していたようです。

甲状腺腫大の原因は甲状腺腫、甲状腺炎、甲状腺腫瘍とあります。

その中で甲状腺腫は腫瘍ではなく、食餌中のヨード不足が原因で甲状腺が肥大したものです。

甲状腺腫は飼鳥の中でもセキセイインコと文鳥に多発するとされます。

甲状腺腫が軽度の場合、症状は表だって出ることはありません。

しかし、病状が進行しますと腫大した甲状腺が気道を圧迫し始め、ブラウンちゃんのように開口呼吸をするようになります。

さらに咳、喘息、鳴き声の変調が認められます。

甲状腺腫大が重度になりますと胸部食道の圧迫からそ嚢内の食物停滞が生じたり、チアノーゼを起こしたりする場合もあります。

治療には、甲状腺ホルモン剤であるレボチロキシンナトリウム(T4)や乾燥甲状腺が選択されます。

飼鳥の病状は水面下で進行することが多いと感じます。

日常的に犬猫のようにスキンシップする機会も少ないため、飼鳥は重症例で受診されることが多いのも事実です。

重症例では、診察のために手に取るだけでもそのストレスで死亡するケースもあります。

そのため、鳥の診察には非常に気を使います。

今回の様に治療に入る前に死亡されるケースに遭遇しますと、自分の力の至らない点を反省することしきりです。

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