こんにちは 院長の伊藤です。

本日、ご紹介しますのは文鳥の上嘴欠損の症例です。

鳥にとって嘴は餌を取るために非常に大切な器官です。

何らかの原因でこの嘴に亀裂が入ったり、欠損を生じたときに適切な対応をしないと採食困難となり死亡する場合もあります。

シルバー文鳥のギンちゃん(性別不明、4か月齢)は同居中の他の文鳥に攻撃され、上嘴の付根から亀裂が入り、今にも折れて取れそうとのことで来院されました。

下写真黄色丸の部分が上嘴の亀裂が入り取れかかっている部位です。

見るからに痛々しい状態です。

折れかかっている嘴をまず機能的に修復します。

医療用の瞬間接着剤で上嘴右側半分を接着してみます。

嘴を整復してしっかり嘴付根に圧着させます。

わずかですが間隙が生じました。

これだけでは嘴は安定しませんので、歯科用のセメントコーティングを施すことにしました。

確実にセメントを固定するために、歯科用のマルチシリンジ(下写真黄色丸)から空気を患部へフラッシュして乾燥させます。

10分ほどしたところで、患部はしっかり固定できたようです。

右半分の鼻の穴が強度的に埋めざるを得なかったですが、この状態で経過を診ていきます。

上嘴は付根にある成長板が日々伸長して伸びていきます。

付根から完全に嘴が脱落したら対処が困難になりますが、今回のギンちゃんの場合は半分の上嘴亀裂なので、つながっている嘴部分の強度的サポートが期待できます。

さらにギンちゃんはまだ4か月齢という成長期でもありますので、右半分の成長板の障害が重度でなければ、嘴の再生回復は可能だと思います。

嘴が脱落した場合、人工の嘴を装着して採食できるようにした報告は海外にあるようですが、国内では見かけません。

自力で採食できなければ、飼主様自ら強制給餌して頂く必要があります。

上嘴欠損はまだ自力で採食可能な場合が多く、下嘴欠損の場合は強制給餌が必要となります。

1か月ほどこの状態で嘴の再生を診ていきます。

この嘴でしっかり採食して頂きます。

ギンちゃん、お疲れ様でした。

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