哺乳類の皮膚が何らかの原因で欠損した場合、一般的には開いた皮膚の端と端を縫合することで皮膚は綺麗に修復します。

しかし、皮膚の欠損が広い範囲に及んでしまうと単純に皮膚を引っ張って縫合することが不可能となります。

そこで、皮膚形成外科的なアプローチが必要となります。

本日ご紹介しますのは、猫のちび君です。

これまでにもたびたび外出して、外猫と喧嘩をして外傷で受診されることが多い猫です。

今回は、喧嘩の外傷で左前肢の手首より上に咬傷で歯型が残る程度でしたので患部を洗浄消毒し、念のためエリザベスカラーを装着してもらい、抗生剤を処方しました。

これで一件落着とみていましたところ、1週間後に来院、患部が大きく皮膚欠損しており、すでに単純な縫合ではうまくいかない状況になっていました。

飼い主様が早くにエリザベスカラーをはずし、ちび君は一生懸命患部を舐めまくっていたそうです。 残念。

欠損しているのは黄色丸の箇所です。

丁度、手根関節周辺の欠損で黄緑色の矢印方向に皮膚を寄せ集めることは不可能です。

そこで欠損部の上部に長方形に切り込みを入れ、この切り込んだ皮膚(皮弁)を下方に引っ張って、欠損部を覆うようにします。

この形成外科的手法を皮弁法と言います。

欠損部から上方に皮弁作成のため、メスで切り込みを入れているところです。

皮弁を上方(黄色矢印方向)に牽引して、欠損部まで到達できる長さかを確認します。

皮弁を下方に牽引します。

この段階で、欠損部は皮弁で被覆されています。

下写真はドレインチューブ(下写真矢印)です。

患部が炎症で浸出液がまだジワジワ出ますので、このチューブで外部に排液をします。

患部は徹底的に洗浄します。

これで手術は完了です。

40針ほど縫合しました。

排液が治まったところで、ドレインチューブは抜去します。

手根関節の可動が十分できるまで、つまり皮弁が十分伸展するまで時間が必要ですが、ちび君頑張っていきましょう!

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