猫の低形成卵巣・子宮角について
しばらくぶりのブログです。
ゴールデンウィーク中は緊急の手術が続いて、体力的にも限界に来ていました。
何とか体調も戻り、ブログの記事も更新頑張っていきたいと思います。
さて、本日ご紹介しますのは猫の左側卵巣と子宮角が未成熟(低形成)の症例です。
スコテッシュ・フォールドのエルちゃんは当院で避妊手術を受けることとなりました。
早速、開腹して左の卵巣と子宮角を確認したところ、非常に細い子宮角だなと感じました。
次に右の卵巣と子宮角を探したところ、見つかりません。
慎重に見ていきますと、左よりもさらに細く、脆弱な子宮角と痕跡程度の卵巣が見つかりました。
下写真の黄色矢印が左子宮角(まだ太い)、白矢印が卵巣と子宮角(最初は血管と見間違えました)です。
白丸は右卵巣、黄色丸は左卵巣、白矢印は右子宮角、黄色矢印は左子宮角です。
子宮の先天性異常は、性染色体の数の異常が関係します。
性染色体数以上がそれ以降の性腺や発現系の発達に影響を与えます。
XXY(クラインフェルター症候群)やXO(ターナー症候群)等は様々なレベルで性腺・生殖器に不明瞭さを発現するそうです。
今回のエルちゃんも性染色体数の問題があるかもしれません。
いずれにせよ、エルちゃんのこの子宮では妊娠することはできないでしょう。
これまで多くの猫たちの避妊手術を実施して参りましたが、今回のエルちゃんのようなケースは初めてです。
以前、犬の真性半陰陽の症例を載せたことがありますが、今回のケースとは異なります。
いろいろな体の難しいシステムの中で繁殖という点は不完全であっても、避妊していまえば特にその後の問題はありません。
エルちゃん、猫としての命を全うして下さいね!