チンチラの脊椎障害(だいず君の危機!前篇)
チンチラは非常に繊細な齧歯類です。
上手に飼育されると平均寿命は10年。
記録によると18~20年という長寿の個体もいるそうです。
今回、ご紹介させて頂きますのはチンチラのだいず君(1歳、雄)です。
突然起立不能に陥り、来院されました。
チンチラは体調が思わしくなかったり、疼痛が激しかったりすると眼を閉じて耐えていることが多いです。
だいず君はまさに、眼を閉じて自力で立ち上がることもできません。
さらに呼吸不全の兆候が表れてきましたので、ICU処置室(酸素室)に入れて呼吸管理を実施しました。
食欲は全くなく、ショック状態に陥っています。
後肢の痛覚が消失しており、おそらくは脊椎損傷の可能性があると思われます。
対症療法として、ステロイド剤、腸蠕動促進剤、抗生剤の注射をします。
呼吸が落ち着いたところで、レントゲン撮影を実施しました。
単純レントゲン撮影では特に脊椎骨の脱臼、亀裂などの所見は認められません。
CTで脊椎造影できれば、今回の原因の詳細は判明するかもしれませんが、今のだいず君にはこれ以上の検査は命に関わるため出来ません。
しかし、後躯不全麻痺と疼痛による振戦から脊椎障害であることは疑いないと思います。
だいず君は食欲が全くありませんので、流動食を少しずつ飲ませていくこととなりました。
チンチラはウサギと比較しても、繊細で今回のような状況におかれるとストレスだけで命を落とすこともあります。
投薬と強制給餌を続けて6日目のだいず君です(下写真)。
自主的に少しづつですが、流動食を飲んでくれるようになってきました。
でも、まだチモシー・ペレットについては口をつけてくれません。
相変わらず、眼はつむったままです。
受傷後、8日目にして流動食だけで生活していましたので、軟便が続き、だいず君は排便時に腹圧をかけていきむようになり、直腸脱を発症してしまいました。
肛門周囲を拡大したのが下写真です。
直腸が肛門から脱出した場合、その原因は2つあります。
直腸脱と腸重積の2種類です。
ゾンデ(探子)で用いて鑑別したところ、幸い直腸脱でしたので、飛び出した直腸をもどして肛門を縫合糸ですこし縫いこんで絞り込みました(下写真)。
1週間以内に縫合糸を抜糸します。
腸重積ですと開腹手術が必要となります。
正直、腸重積でなくて良かったです。
以前、腸重積のチンチラに症例報告をしましたが、興味をある方はこちらをクリックして下さい。
食餌も自力で摂食できず、いまだ起立不能のだいず君。
今後の展開が不安ですが、この続きは次回、「だいず君の危機!後編」をお待ちください。