チンチラの子宮蓄膿症
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、チンチラの子宮蓄膿症です。
犬ではお馴染みの子宮蓄膿症ですが、私的にはチンチラの子宮蓄膿症は珍しいです。
一般にチンチラは齧歯類であることから、歯科疾患と消化器系疾患が圧倒的に多いです。
チンチラのナナちゃん(雌、5歳4か月、体重400g)は外陰部からおりものが出るとのことで来院されました。
受診時は既に外陰部をおそらく自身で舐めており、確認は出来ませんでした。
食欲がかなり落ちているとのことで早速、エコーで子宮を確認してみました。
下写真の黄色矢印は、子宮内部の低エコーから無エコー部を示しています。
これは子宮内に液体が貯留していることを示します。
子宮自体が何層にも折り重なる状態で描出されています。
何らかの液体が貯留して子宮が大きく腫大している点で子宮蓄膿症を疑います。
犬の子宮蓄膿症で度々申し上げていますが、子宮蓄膿症は全身感染症です。
緊急の疾患であり、全身状態が良ければ早急に卵巣子宮の全摘出が必要です。
飼い主様のご了解を頂き、早速全身麻酔下で卵巣・子宮全摘出手術を実施することとしました。
まずは麻酔導入を行います。
麻酔導入出来ましたので、導入箱から出て頂きマスクで維持麻酔を行います。
チンチラは体毛が密集していますので、実際の骨格は見た目よりも華奢です。
ナナちゃんは体重が400gですから、1歳のハリネズミとほぼ同じくらいでしょうか。
腹部に正中切開を入れます。
腹部を切開すると真下に腫大した子宮が認められます。
慎重に子宮を外に出します。
若干、黄色を帯びた子宮(黄色矢印)です。
子宮間膜の血管は充血怒張しています。
実際、私が手術している模様です。
腹腔内は非常に狭いため、傍から見ると何をやっているか分からないくらい細かな作業になります。
卵巣周辺の血管をバイクランプという器具でシーリングしています。
左右の子宮角です。
子宮角及び子宮頚部が腫大しており、健常なチンチラの子宮と比較して数倍大きくなってます。
子宮頚部を縫合糸で結紮しています。
腹腔内に臓器を収めて、出血がないことを確認し閉腹します。
これで手術は終了です。
手術終了時に外陰部から膿が出ているのを認めました。
ナナチャンは麻酔の覚醒も速やかです。
手術翌日のナナちゃんです。
患部を齧らないようにエリザベスカラーを付けたいところですが、齧歯類の中でもデリケートですから着衣で保護する方針で行きます。
術後2日目にして診察室内を走り回れるまで回復してます。
食欲も出てきました。
当院の新人の病院犬ドゥがナナちゃんに挨拶してます。
ナナちゃんの摘出した子宮を切開しました。
子宮角にはクリーム状の膿が貯留していました。
患部の顕微鏡所見です。
子宮内膜細胞は変性壊死を起こし、白血球やマクロファージの細菌を貪食した後、壊死腐敗した所見が認められます。
ナナちゃん手術後3日目にして、元気に退院して頂きました。
ナナちゃん、お疲れ様でした!
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