犬の異物誤飲 (その15 紐)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのは犬の異物誤飲で 紐(ひも) です。
チワワのセナ君(雄、7歳)は紐を誤飲したとのことで来院されました。
紐は歯石を取るために齧らせていた太めの紐(ロープに近い)とのことです。
紐や糸のような異物を線状異物と言います。
線状異物を誤飲しますと胃から十二指腸を通って、空回腸あたりで引っかかり腸を巻き込んで、腸が団子状に丸くなってしまいます。
最悪、腸は血行障害により壊死に至りますので、患部の腸を切除して健全な腸の端と端を吻合しなくてはなりません。
そうなっては大変ですから、早速セナ君のレントゲン撮影を実施しました。
黄色丸の胃内に何かありそうな感じがしますが、フードを食べており詳細は不明です。
ただ十二指腸以下には恐らく異物は認められません。
飼い主様が紐の誤飲は確認していますので、試験的開腹をすることとなりました。
全身麻酔下のセナ君です。
皮膚切開を行います。
胃を外に出しました。
触診すると胃内部に硬い紐の感触が分かります。
恐らく胃内で紐は移動せずに停留していたようです。
胃を切開します。
切開部から紐が顔を出しています。
問題はこのまま鉗子で紐を牽引して、十二指腸で引っかかっていないかということです。
紐が十二指腸を巻き込んでいれば、腸に切開をして紐を摘出することになります。
そんな私の心配とは関係なく、紐を牽引したところ、スルスルと紐はその全容を現しました。
胃の中で紐は留まっていてくれたようです。
摘出した紐です。
切開した胃です。
これから胃を縫合します。
胃の縫合は終了です。
皮膚縫合して手術は終了です。
麻酔から覚醒したばかりのセナ君です。
暫くはセナ君は、食事制限をした入院生活をしていただくこととなりました。
退院時のセナ君です。
異物誤飲は詰まる所、飼主様の不注意に根差します。
動物は、異物を食べることの良し悪しの判断はできません。
あくまで感情的に口に入れてしまうだけです。
嘔吐させる薬を飲んで、吐き出すことが出来ればよいのですが、出来なければ胃切開するしかありません。
異物を誤飲したと確認したら、一時間以内に病院を受診して下さい。
どんな異物を食べたら、どんな結末が待っているのかを飼主様にお伝えするために異物誤飲シリーズを今後も続けていく所存です。
セナ君、お疲れ様でした!
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