アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲(砂利・小石)
こんにちは 院長の伊藤です。
アーカイブシリーズ 犬の異物誤飲をお送りします。
本日は砂利・小石の誤飲です。
砂利や小石ならば、大きさによってはそのまま便と共に排出されます。
しかし、一度に多量の砂利・小石を誤飲した場合はそうはいかない場合があります。
胃袋の中を砂利・小石が動き回り、胃粘膜を剥がし、出血、引いては胃潰瘍まで悪化します。
腸においては腸閉塞をもたらし、腸管壊死に至り、最終的に腹膜炎となります。
今回はそんな危険な部分を含めての異物誤飲症例です。
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、久しぶりになりますが犬の異物誤飲です。
犬は、無分別に色々な異物を誤飲します。
飼い主の皆様にどんな異物を飲み込んでしまうのか注意を喚起するためにも、この異物誤飲シリーズを掲載することにしてます。
これまでに17例の異物誤飲の症例をご紹介してきましたが、今回は大量の小石を飲み込んだ症例です。
その詳細は、当院HPの犬の症例と治療例一覧の中の異物誤飲の項目をご覧ください。
パグのレオ君(7歳4か月齢、去勢済、体重7.5kg)は健診で心臓のチェックのため来院されました。
心臓の肥大などを確認のためレントゲンを撮ったのですが、腸内に石と思しき異物を認めました。
下写真の空回腸内の白く描出されているのが異物です。
様々な大きさの小石が確認されます。
レオ君は今までにも散歩中に砂利などを口にする癖のあるタイプだそうです。
小石も数個ならば、便中に排泄されるか、要経過観察もありと思います。
はたして、今回この多くの石を排泄しきれるものか悩んでしまいます。
飼い主様と今後のことを話し合って、腸閉塞(イレウス)による腸壊死を回避するためにも、異物を摘出することとなりました。
レオ君に全身麻酔を施します。
腹部の正中線にメスで割を入れて行きます。
小石が詰まっていると思われる空腸です。
下は患部を拡大した写真です。
ちなみに小腸は腹腔内最長の消化管で、体長の約3.5~4.5倍の長さがあります。
空腸は小腸の大部分を占め、空(から)であることが多いため空腸という名がつけられたと言われています。
石が詰まっている部位にメスを入れます。
腸管壊死は認められませんので、腸切開による異物摘出手術を実施します。
鋏で漿膜から粘膜まで全層を切開します。
腸内から異物が顔を出しました。
鉗子で一つづつ石を摘出していきます。
数としては、かなりの小石・砂利が詰まっていますので、すべてを摘出するのは大変です。
空腸の全層を単純結紮します。
この部位での縫合は終了です。
さらに空腸の遠位端にも小石が詰まっている部位がありました。
下写真の黄色丸が血行不良で、腸管の若干のうっ血が認められます。
小石が詰まっている部位を少しずらして、健康な腸管に切開を入れます。
腸内の小石を一つづつ優しく押し出して摘出を続けます。
下写真のような小石がこの部位にも大量に詰まっています。
最初に切開した部位よりもこちらは多くの小石が詰まっていましたので、腸管の管腔径の狭窄を防ぐために欠損部を横断するように縫合していきます。
縫合が終了し、生理食塩水で念入りに縫合部を洗浄します。
レオ君の空回腸の全容です。
黄色丸は最後に切開・縫合した部位です。
腸を腹腔内に戻します。
麻酔から覚醒したばかりのレオ君です。
意識が戻り、エリザベスカラーを装着されました。
今回、摘出した小石・砂利の一部です。
摘出した小石・砂利を洗浄して並べてみました..
全部で大小合わせて128個ありました。
レオ君の術後の経過は良好で排便も問題なく出来るようになりました。
退院時のレオ君です。
異物誤飲傾向のある犬は、何度となく繰り返します。
今回はたまたまレントゲン撮影で発覚しましたが、今後もご注意いただく必要があります。
レオ君、お疲れ様でした!
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