エプリスとは歯肉部に生じる限局性腫瘤病変を指していいます。

つまり、歯茎にできたしこりのことです。

実はこのエプリス、組織学的・病理学的分類が不明瞭、混乱している部分があります。

人医領域では、炎症性エプリスと腫瘍性エプリスの2種類に分類されています。

炎症性エプリスには、肉芽腫性エプリス、線維性エプリス、血管腫性エプリス、巨細胞性エプリスがあります。

腫瘍性エプリスには、線維腫性エプリス、骨形成性エプリス等が挙げられます。

獣医領域では、1979年にDubiezigがエプリスを肉芽腫性エプリス、骨形成性エプリス、棘細胞性エプリスという3種類に分類しました。

1996年にはGardnerは反応性病変と周辺性歯原性腫瘍の2つのカテゴリーに分け、それぞれを細分化して分類するようになりました。

これ以上病理学的な分類を説明しても混乱を招きますし、本編の主旨でありませんので止めます。

結局のところ、エプリスなる病変は炎症性のものと腫瘍性のものがあるために外科的切除が必要な場合があるということです。

ゴールデンレトリバーのチャッピーちゃんは、右上顎部の歯肉に腫瘤が出来て来院されました。

患部を組織検査したのが以下の写真です。

弱拡大の顕微鏡写真で粘膜上皮の増生(黄色丸)と粘膜下織の結合組織の増生(草色丸)が認められます。

下写真は強拡大像です。

粘膜直下にリンパ球浸潤がありますが、異型細胞(腫瘍細胞)は認められません。

組織検査からこの腫瘤は線維性エプリスと診断されました。

そして、このエプリスの外科的切除を実施しました。

黄色丸の箇所がエプリスです。

全長3㎝ほどの腫瘤です。

電気メスで切除開始です。

取り残しの無いように電気メスのチップを変えつつ切除を完了しました。

再発の無いように気を付けてマージンを若干取りました。

歯茎が電気メスの熱で焦げ付いています。

退院後のチャッピーちゃんの患部回復も良好で、術後1か月後の写真が次のものです。

電気メスの跡も癒えてます。

今回の線維性エプリスは、反応性(非腫瘍性)病変としては比較的多く遭遇するタイプです。

局所的な刺激や外傷により歯肉内の線維性結合組織が、局所的に反応して過形成したエプリスです。

腫瘍性でなくて良かったです。

愛犬の口の中を定期的にチェックする習慣をつけて下さい。

そして、歯肉に腫瘤が認められたらお早めに受診して下さい。

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