犬の輪ゴムによる縛創
現場の忙しさにかまけてブログの更新を怠けており、失礼いたしました。
本日、ご紹介しますのは輪ゴムによる縛創についてです。
縛創とは、字のごとく紐やゴム等で、縛られることによって生じる創傷を指します。
柴犬のマロンちゃんはつい10日ほど前に当院で避妊手術をお受けいただきました。
退院されてから、下腹部の患部を保護するため、飼い主様が自作の腹帯をつけられていたそうです。
ただ問題は、その腹帯を固定するために前足にゴムを使用したことです。
ゴムは輪になった部分が時間の経過とともに、皮膚を圧迫します。
ついでゴムは皮膚を破り、さらに結合組織や筋層まで食い込んでしまいます。
多くの例では、このゴム輪がこの時点で筋層まで深く埋没しているため、また被毛に覆われているため、気づかれないことが多いです。
右前足をマロンちゃんが痛がるとのことで患部を診ましたところ、まさにこのゴム縛創になっていました。
下写真の黄色丸の部分がゴム縛創で皮膚は裂けて筋肉層が露出しています。
皮膚組織の一部は壊死を起こしていましたので、患部を切除してデブリードメントを行うこととしました。
マロンちゃんは避妊時と同様、再度全身麻酔を施されることになりました。
下写真は患部のアップです。
ちょっと痛々しいですね。
患部の皮膚癒合を確実にさせるため、陳旧化した壊死組織は切除します。
あえて出血させて、結合組織と皮膚を順次縫合していきます。
思いのほか出血があり、電気メスで止血していきます。
縫合部の死腔を失くすため、結合組織を縫合します。
次いで皮膚縫合をして終了です。
無事終了して麻酔から覚醒したマロンちゃんです。
今回の事例は、既にゴムの存在があっての縛創なので非常にわかりやすいものです。
その一方で、小さなお子さんのみえる家庭では、子供が犬の肢に輪ゴムをかけて、そのまま忘れ去られているうちに、このゴム縛創に至っているケースが多いです。
このゴム縛創、パッと見は切断創と見間違えることが多いです。
輪ゴムは食い込んでいる位置から末梢部にかけてうっ血して浮腫ができ、あたかも湿疹が起きているようにみえます。
輪ゴムが食い込んでくびれている位置へ深く鉗子を差し込んで、輪ゴムを確認して離断・摘出することが出来れば予後は良好です。
つまるところ、輪ゴムは皮膚に甚大なダメージを与えますのでくれぐれもご注意ください!