トイプードルの橈尺骨骨折(その2)
トイ種の前腕部骨折(橈尺骨骨折)は日常的に起こりがちな骨折です。
以前、トイプードルの橈尺骨骨折を載せました。
その後も、橈尺骨骨折は途切れることなく起こっています。
手術手技の難しさもあり、受傷年齢が若いこともあり、また骨癒合不全に陥りやすい部位であることから、完治まで時間がかかる骨折であることを認識して頂きたく思います。
飼い主様への注意を喚起するためにも、今後もこの骨折については症例報告を続けていきたいと考えています。
トイプードルのロック君(7か月齢、雄、体重2.6kg)はダイニングテーブルから飛び降りて、前足がブラブラしているとのことで来院されました。
患部をレントゲン撮影しました。
黄色丸で囲んだ部位が骨折部です。
この状態は、いわゆる若木骨折と称される骨折形態をとっています。
若木骨折については、以前オカメインコの若木骨折でご紹介させて頂きましたので、そちらをご参照ください。
体重がある程度あり、骨折ラインも橈骨遠位端でもまだ中央寄りということで、プレートによる内固定を実施することとしました。
しっかり内固定するためにも、上3穴・下3穴の6穴タイプのプレートをインプラントします。
下写真にありますように骨折部が腫れあがって、内出血しています。
骨折部は骨皮質・骨髄が破たんしていますので、それなりに出血はあります。
りトラクターで骨折部を確認します。
骨折部は若干、斜骨折になっているようです。
骨折部をプレート用骨保持鉗子で固定します。
直径1.5㎜の骨皮質スクリューを使用します。
直径1.1㎜のドリルビットでしっかり下穴を作ります。
この後、ねじ山を切るため(タップ)に直径1.5㎜のタッピングをします。
スクリューの穴ができた所で、1か所ずつスクリューを締めていきます。
6本のスクリューでプレートの固定が完了しました。
後は筋肉、皮下組織を縫合しました。
最後に皮膚縫合で終了です。
レントゲン撮影を行い、内固定の最終チェックです。
しばらくは、スプリントで患肢を保護する生活を送って頂くことになります。
橈骨骨折はある程度までは、飼主様の注意で防ぐことは可能です。
一旦、橈骨骨折しますと骨癒合まで時間はかかり、ワンちゃんはもとより飼い主様も介護に気を遣わなくてはなりません。
もし、癒合不全に陥れば、完治までさらに時間を要します。
手術の模様がリアルすぎるとのご指摘を受けることもあります。
しかし、痛い思いをするのは皆様が飼われているワンちゃんであることを忘れないでください。
そして、いくら上手な文体で飼主様の注意を引こうとしても限界はあります。
そんな中、私個人としては血が出ていたり、患部が露出していたりしても、リアルな写真であるほどに飼主様の意識改革につながるなら良しと考えてます。
ロック君、術後はなるべくおとなしく生活していてくださいね!