フェレットの脊索腫(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、フェレットの脊索腫です。
以前もこの脊索腫についてはコメントさせて頂きました。
興味のある方はこちらをクリックして下さい。
脊索は胎生期に体を支える支柱として機能し、椎板から椎骨になる過程で退化し、出生後は椎間板の髄核として痕跡が残る組織です。
脊索腫は、この遺残した脊索から発生する悪性の腫瘍です。
治療法として、外科的切除が第一選択とされます。
尾に発生した脊索腫は切除後の局所での再発、遠隔転移の報告はなく、予後は良好とされています。
フェレットのシロンちゃん(3.5歳、去勢済、体重1.5kg)は、尻尾の先端部に大きな腫瘤ができたとのことで他院からの紹介で来院されました。
肉眼所見から脊索腫であることは疑いなく、このまま外科的切除を実施することとなりました。
まず全身麻酔が出来る状態にあるか、確認のため術前の血液検査を行います(下写真)。
肝機能、腎機能等特に問題はなく、このまま手術に移ります。
麻酔導入箱にシロンちゃんを入れ、麻酔導入します。
導入箱から出して、シロンちゃんを維持麻酔に替えます。
下写真黄色丸がその脊索腫です。
もともとシロンちゃんは尻尾が生まれつき短く、かつ小さな脊索腫が発生していたとのことです。
患部は数年前から現状の大きさになっていたようです。
尻尾の付根に止血帯(下写真黄色矢印)をつけて、断尾時の出血を抑えます。
早速、断尾を実施します。
V字にメスの切り込みを入れます。
V字にするのは切断面の接触面積を増やし、患部の皮膚癒合を促す目的のためです。
フェレットは尾骨も太く、皮膚も厚いです。
尾静脈に加えて、背外側動脈、腹外側動脈、腹側動脈、正中尾動脈などが走行してます。
バイポーラ(電気メス)で止血・切開を展開しながら尾骨にアプローチしていきます。
骨剪刃を用いて、尾骨を切断します。
切断面をメスでトリミングします。
次いで、止血帯を少しずつ緩めて出血部を確認し、バイポーラ(電気メス)で止血を実施します。
止血が完了したところで皮膚を縫合しますが、縫い代を十分に取るために尾骨をロンジュールでカットして微調整します。
皮膚縫合を行います。
これで手術は終了します。
患部は床面との摩擦などが想定されますので、テーピングします。
全身麻酔覚醒直後のシロン君です。
摘出した脊索腫です。
退院して2週間後のシロン君です。
患部の抜糸で来院して頂きました。
患部の若干の腫脹は認められますが、皮膚の癒合は完了しており、抜糸できる状態になっています。
抜糸直後の患部です。
大きな脊索腫でかなり重かったと思われますが、摘出後は動きも軽快になったシロン君です。
お疲れ様でした!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、上記バナーをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。