モルモットの毛包上皮腫
こんにちは 院長の伊藤です。
モルモットには、皮膚等の上皮系腫瘍が多発します。
今回は、モルモットの毛包上皮腫についてコメントさせて頂きます。
アビシニアン・モルモットのベッカム君(雄、5歳)は頭頂部に腫瘤が出来たとのことで来院されました。
アビシニアンという品種は、モルモットの中でも体全体につむじがあり、巻き毛モルモットとも呼ばれています。
どちら側が頭か分からなくなりますね。
下写真黄色丸がベッカム君の頭頂部にあたります。
患部を触診しますと内部が充実感があり、皮膚が一部擦過により出血・痂皮形成が認められます。
患部の細胞診を実施させて頂きました。
下写真は細胞診の画像です。
無核角化扁平上皮細胞の集塊(黄色丸)が目立って混在しています。
一部には基底細胞腫に類似した細胞(下写真)が認められます。
細胞診は毛包上皮腫との診断結果でした。
この毛包上皮腫は良性の腫瘍です。
特にベッカム君の場合は、頭頂部の腫瘍なのでチモシー(乾草)等に頭からもぐりこんだりすると傷を受ける場合も出て来ます。
さらに頭部に荷重がかかるのもストレスに成り得ます。
自傷行為の対象となることも想定されます。
飼い主様のご要望もあり、腫瘍を摘出することになりました。
頭部を剃毛しました。
剃毛すると随分大きな腫瘍であることがお分かり頂けると思います。
全身麻酔を施すため、イソフルランを流し込む麻酔導入箱に入って頂きます。
十分麻酔が効いてきたところで、伏臥姿勢に移します。
頭頂部の皮膚は緊張していますので、腫瘍のマージンを十分に取って切除することが出来ません。
今回は良性腫瘍なので、皮膚を切開して皮下の腫瘍を摘出する方法を選択しました。
皮膚を切開しますと粟粒状の腫瘍が顔を覗かせています。
皮下に残存する腫瘍を滅菌綿棒できれいに取り除きます。
皮膚を縫合して終了です。
無事麻酔から覚醒したベッカム君です。
摘出した腫瘍です。
割面は毛根が中心部に存在しており、黒色に変化していました。
胎児期の毛芽に類似する細胞が、成熟した毛球を模倣した構造物や毛嚢漏斗部へ分化して生じる腫瘍とされます。
毛包上皮腫はチーズ上の顆粒状内容が充実した腫瘍とされます。
その90%以上が良性腫瘍とされます。
基本的には外科的摘出を行なうことで、再発は稀とされます。
手術の経過もよく元気にベッカム君は退院して頂きました。
その後、残念ながら脊椎損傷と思われる後躯麻痺がおこり、手術の5週間後に急逝されました。
ベッカム君とは3年近くお付き合いさせて頂きましたが、非常に残念です。
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