こんにちは 院長の伊藤です。

最近は、エキゾッチクアニマルの腫瘍に関する記事ばかり書いてます。

犬猫も腫瘍疾患も年々増加している感がありますが、エキゾチックアニマルの腫瘍に関してははるかに犬猫を凌駕してます。

しかも、犬猫よりも大きく増殖した腫瘍を摘出する症例が多いのです。

これは、エキゾチックアニマルの飼主様の出来物(腫瘍)に対する意識の差もあるように思います。

本日は、モルモットの腫瘍です。

脂肪腫はごく一般的に皮下脂肪に発生する良性腫瘍で、その発生部位や大きさに合わせて外科的に摘出することが多いです。

今回は、脂肪腫ではなく悪性の脂肪肉腫です。

モルモットのシフォン君(雄、7歳2か月齢、体重950g)は、左の肘の周辺に腫瘤が出来て次第に大きくなり来院されました。

かなり大きい腫瘤です。

まずは患部周辺をバリカンで剃毛しました。

下写真の黄色丸が剃毛後の患部です。

これだけ大きな腫瘤になると、色んなところで引っかけて、皮膚が裂けたりするようになると思われます。

念のため、細胞診を実施しましたが脂肪細胞しか取れずに、脂肪腫であろうと思われました。

飼い主様の意向もあり、外科的に摘出することとなりました。

シフォン君の年齢も考慮して慎重に麻酔をかけます。

導入麻酔から維持麻酔に切り替えました。

生体情報モニターの電極を装着します。

出来る限り、腫瘍のマージンを取りたいのですが、場所が肘関節に干渉する部位なので非常に悩ましいです。

まず腫瘤の周囲から硬性メスで切開を始めます。

腫瘤の周囲には血管が浸潤していますので、バイポーラ(電気メス)で止血を同時に行います。

指先の感触で言えば、まさに脂肪の塊です。

次いで、腫瘍の皮膚外周部にメスで切開を入れます。

腫瘤の摘出はこれで完了です。

患部は縫合時に緊張がかかりますから、皮下組織と皮膚とを鈍性に剥離して、少しでも皮膚を伸張して皮膚癒合に有利になるようにします。

摘出後の患部です。

大きな腫瘤であったため、皮膚欠損は大きいです。

上腕骨の周辺組織が露出されています。

綺麗に皮膚癒合できるよう5‐0ナイロン糸で細かく縫合します。

縫合はこれで終了です。

良く見ると別の部位に皮膚の腫瘤を認めました。

同じく、この腫瘤も摘出しました。

麻酔を切り、これで手術は終了です。

麻酔から無事覚醒したシフォン君です。

左の肘は、縫合で皮膚が突張ってますから、歩きにくそうです。

腫瘤は重量が35gもありました。

シフォン君の体重が950gですから、そこそこの重さです。

腫瘤の大きさは、30×40×50㎜でした。

皮膚切開側です。

切開部の裏側です。

腫瘤に切開を加えた写真です。

メス切開時の感触は柔らかい脂肪組織そのものです。

病理検査にこの腫瘤を出しました。

低倍率像です。

空胞を形成している脂肪細胞が認められます。

中等度の拡大像です。

下写真は高倍率像です。

真皮から皮下組織にかけてシート状に増殖する多形性・異型性を示す類円形・紡錘形の腫瘍細胞が特徴です。

成熟脂肪細胞の様に細胞質が豊富で明るい空胞状を呈する腫瘍細胞が頻繁に観察されます。

今回、摘出した組織は脂肪細胞由来の悪性腫瘍(脂肪肉腫)でした。

摘出は完全であるとの病理医からの所見を頂きましたが、今後は局所再発や遠隔転移には注意が必要と思われます。

術後2週目で抜糸に来院したシフォン君です。

縫合部は瘡蓋(かさぶた)が形成されていますが、皮膚の癒合は問題なく完了しています。

抜糸後の患部です。

非常に大きな脂肪肉腫でしたが、術後の経過もシフォン君は良好です。

シフォン君、お疲れ様でした!

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