こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、モルモットの尿石症です。

以前、モルモットの尿動口近くの尿石症についてコメントさせて頂きました。

興味のある方はモルモットの尿石症こちらをクリックして下さい。

モルモットでは尿石症は、2歳半以上の中齢から高齢で多発します。

雌は尿道開口部が肛門に近いため、小さな結石であれば、そのまま尿道から自然排出される傾向があります。

一方、雄ではペニスを含めて尿路が長い分、結石による尿路閉塞が生じやすいとされています。

他の動物と同様、モルモットも尿石症になると排尿が気持ち良く出来なくなったり、血尿が生じたりします。

排尿時に疼痛のあまり、泣き叫ぶ個体もいます。

モルモットのプー君(雄、4歳7か月齢、体重1.0kg)は1か月前から血尿が続くとのことで来院されました。

レントゲン撮影を実施しました。

下の2枚のレントゲン写真で、白く写っているのが膀胱結石です。

直径1.5㎝の結石です。

膀胱結石は表面が円滑でボール状の形態を示すことが多いです。

しかし、プー君のこの結石は表面の一部が角のような形状を示しており、この部位で膀胱内を傷つけ慢性的な出血を起こしているのかもしれません。

いづれにせよ、この結石を摘出することが排尿障害を治すためにも必要です。

外科的に膀胱を切開して、結石を摘出することとなりました。

プー君を麻酔導入箱に入れ、イソフルランで眠らせます。

マスクで維持麻酔に切り替えて、生体情報モニターのセンサーを装着します。

これから皮膚、腹筋を切開します。

下写真に出てきたのは、膀胱です。

膀胱の先端部に牽引用の縫合糸を通します。

膀胱を硬性メスで切開します。

膀胱内に結石を覗き見ることが出来ます。

ピンセットで結石を把持します。

当然のことながら、レントゲンで確認した結石と同じ形状です。

膀胱内を生理食塩水で洗浄します。

膀胱内の状態を確認します。

膀胱の粘膜は肥厚し、内出血と思われる箇所が複数ありました。

膀胱を縫合します。

切開部位が小さいため、合成吸収糸を使用して膀胱壁を単層の単純結紮縫合を実施します。

縫合が完了したところで、縫合部からの漏出がないか膀胱内に注射器で生理食塩水を注入して確認します。

漏出はないため、腹筋を縫合します。

最後に皮膚を縫合して手術は終了です。

プー君は全身麻酔の覚醒も順調です。

摘出した結石です。

のちにこの結石は、カルシウム(炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム)を成分とするのが判明しました。

尿石の発生要因は、遺伝的素因、代謝異常、栄養バランスの不均衡、飲水量不足、細菌感染などが挙げられます。

カルシウム含有量の多いアルファルファ主体のペレットやビタミンDの過剰摂取が結石の形成に関与しているとの報告があります。

膀胱結石は摘出すれば、すべてが終了ではありません。

前述したように結石形成の原因は様々です。

食生活の見直しも必要ですし、定期検診を受けて頂き尿検査・レントゲン撮影などを継続されると良いと思います。

プー君、お疲れ様でした!

にほんブログ村ランキングにエントリーしています。

宜しかったら、こちらupwardleftをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。

もねペットクリニック