ハリネズミの直腸脱(後編)
こんにちは 院長の伊藤です。
先回、ハリネズミの直腸脱(前編)を載せました。
直ぐに後編を載せる予定でしたが、日常業務に追われ遅れて申し訳ありませんでした。
前編の詳細についてはこちらをクリックして下さい。
さて、ハリネズミのまりぃちゃん(雌、5歳)は直腸脱を起こして来院されました。
脱出した直腸を整復しましたが、結局再脱出を繰り返して、外科的に脱出した直腸を切断して縫合することになりました。
2度に亘る直腸脱による疼痛でまりぃちゃんは苛立った表情を示しています。
早速、全身麻酔を行い外科手術を実施することとなりました。
全身麻酔が効いてから脱出直腸を洗浄・消毒します。
脱出した直腸(下写真黄色丸)です。
まりぃちゃんの麻酔状態を心電図・酸素分圧などモニタリングしながら全身麻酔を実施しています。
今回の外科的手技は、フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)を参考にして下さい。
直腸を牽引するために、脱出直腸壁に支持糸を複数個所かけていきます。
脱出した直腸粘膜部は、非常に脆弱な組織で強い力で支持すると簡単に千切れてしまいます。
フェレットの直腸と比較してハリネズミのそれは短く、そのため外部への牽引をしっかりしないと腹腔内へ直腸が引き込まれてしまいます。
のんびり牽引してると直腸壁が支持糸で避けてしまいそうで緊張する場面です。
脱出している直腸粘膜部(丸く腫瘤状になっている部位)をメスで離断します。
脱出直腸の離断面は血行障害もあって浮腫を起こしていました。
幸いに脱出直腸部は壊死を起こしておらず、離断後は出血が認められました。
次に離断した直腸粘膜断面部を円周状に縫合していきます。
離断直腸粘膜を縫合する際に対側部を縫合糸でひっかけないように鉗子を直腸に挿入して保護します。
フェレットの時の様に綿棒では太すぎるため、モスキート鉗子の先端を利用します。
直腸を誤って対側部まで縫合していないのを確認して、直腸壁の支持糸を外します。
縫合した直腸はスムーズに腹腔内に戻っていきます。
イソフルレンの主麻酔を切ったところで、まりぃちゃんは速やかに覚醒しました。
短期間に何度も全身麻酔をかけることは非常に心配でしたが、まりぃちゃんは頑張って耐えてくれました。
手術翌日のまりぃちゃんです。
食欲もありますが、少量の流動食でしばしの間、対応します。
術後に排便もしっかりできています。
縫合部の直腸が癒合するまでの2週間近くは、排便状態を注意して飼主様にお世話して頂きます。
エキゾチックアニマルは比較的長い期間、下痢が続くと腹圧をかける傾向があり、直腸脱を引き起こすことが多いです。
ハリネズミの場合は神経質な傾向もある一方で、瞬発的に怒ったりもしますので、加えて腹圧をかけることが多いです。
少しでも直腸脱の気配が認められたら、至急受診下さい。
直腸脱を起こして短時間であれば、前編のような整復処置で解決できます。
時間がたつにつれ、外科的直腸切除が必要になります。
退院当日のまりぃちゃんです。
まりぃちゃん、お疲れ様でした!
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