こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギの膀胱結石についてコメントさせて頂きます。

ウサギは食餌中のカルシウムが多いほどに血中に取り込まれ、ほとんどが尿中に排泄されます。

従って、健常時でも尿中には炭酸カルシウムやシュウ酸カルシウムが排泄されます。

そのため、犬猫の尿検査のように尿石の結晶体があるからと言って尿石症と確定診断は出来ません。

結石が尿道なり膀胱なりに確認された場合は、犬猫のように尿を酸化して溶かすといった療法食による治療は出来ません。

結果として、外科的摘出が必要となることも多いです。

今回ご紹介しますのは、そんなウサギの膀胱結石です。

以前、ウサギの膀胱結石(炭酸カルシウム結石)と言う表題で当院HP・ウサギの疾病紹介に載せています。

興味のある方は、こちらをご参照下さい。

ミニウサギのココちゃん(4歳、避妊済み、体重2.0kg)は最近、排尿の切れが悪い、トイレに行ってじっとしている、血尿が出るとのことで来院されました。

実際、受診時にも炭酸カルシウムの結晶体を含む軽度の血尿が確認されました(下写真)。

早速、レントゲン撮影を実施しました。

下写真黄色丸の部位が膀胱内の結石を示しています。

結石を拡大します。

側臥像です。

患部を拡大します。

結石の大きさは約2cmに及ぶサイズです。

術前の血液検査の結果は腎機能には全く問題がありませんでした。

排尿障害で膀胱が腫大するには至ってませんので、早急に外科的に摘出することとしました。

排尿障害があり、腎機能が低下している場合、全身麻酔のリスクが高くて手術できない場合もあります。

ココちゃんは全身状態は特に大きな問題はありません。

ただ陰部周囲は切れ良く尿は出ていないようで、尿漏れによる被毛の汚染が認められます。

全身麻酔も良好にかかっています。

皮膚を切開しますと思いのほか、皮下脂肪が溜まっています。

下写真は膀胱です。

膀胱壁が肥厚しており、炎症・浮腫が確認されます。

膀胱内に細菌が存在しているかもしれませんので、切開する前に注射器で確実に膀胱内の尿を採取します。

膀胱漿膜面の血管走行の少ない部位を狙ってメスを入れます。

膀胱を手で把持したところで、結石の存在は指先に確認出来ています。

下写真黄色矢印は、切開した直下に膀胱結石が顔を出しているところです。

レントゲンで確認した通りの結石です。

表面が微細に凸凹している構造の結石です。

膀胱粘膜は結石が転がるたびに細かな傷がつけられていたことでしょう。

膀胱内部を抗生剤入りの生食で洗浄します。

十分に洗浄した後に膀胱内に抗生剤を滴下します。

仕上げに膀胱壁を4-0の吸収糸(PDSⅡ)で単純結紮縫合します。

縫合完了です。

縫合が完全か、膀胱内に生食を注入して縫合部から漏れがないかを確認します。

特に縫合部からの漏出の問題はありません。

ココちゃんの体全体に対して膀胱はこのくらいの大きさを占めます。

最後に腹壁を縫合します。

皮膚を縫合して終了です。

体全体に対して傷口はこのくらいです。

維持麻酔を切り、酸素吸入をしています。

ココちゃんの意識が戻って来ました。

意識が戻って10分後には何とか立てるようになりました。

術後は排尿の経過を診て行きます。

ココちゃんの術後経過は良好で5日ほどの入院後、無事退院して頂きました。

下写真は1週間後のココちゃんです。

抜糸のため来院して頂きました。

傷口も既に綺麗に治っていました。

下写真は今回摘出した炭酸カルシウムの膀胱結石です。

ココちゃんはアルファルファ等を主成分にした高カルシウムペレットを給餌されていたことが、今回の膀胱結石になったと思われます。

そのため、今後はチモシー主体で一貫して頂くよう食餌指導させて頂きました。

以前と同じ高カルシウムペレットをまた与えてしまえば、同じ膀胱結石が再形成されるということを忘れないで下さい。

ココちゃん、お疲れ様でした!

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