こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはグリーンイグアナの骨肉腫疑いの症例です。

グリーンイグアナのパセリちゃん(8歳6か月齢、雌、体重6.8kg)は右後肢の付根にしこりがあり、庇うように歩行するとのことで来院されました。

体重が7㎏近くありますので、保定には細心の注意を払います。

下写真黄色丸の右後肢付根あたりが腫脹しているのが分かります。

触診すると痛がります。

パセリちゃんのレントゲン撮影を実施することにしました。

小型犬であれば全身を一枚のレントゲンで写せますが、パセリちゃんは体長が長いため2枚に分けての撮影とします。

胸部の異常所見はありません。

下半身の画像です。

右大腿骨の近位端(股関節に近い側)に腫瘤が形成されています。

腫瘤を拡大した画像です(下写真黄色矢印)。

側面の画像です。

この大腿骨に発生した腫瘤ですが、腫瘍である可能性が高いと思われました。

骨腫瘍が活動を始めると骨膜下に新生骨が形成されるため、骨膜が隆起します(骨膜反応)。

骨膜反応には、一般的には薄片状、断崖様、放射状(サンバースト)などが挙げられます。

パセリちゃんの患部はサンバーストに近い形態を示してるように見えます。

犬においては、骨肉腫の症例の約50%が、サンバーストの骨膜反応を示します。

爬虫類においては、骨肉腫の発症例は実態は不明です。

爬虫類のため、犬のように明瞭に骨膜性の針状骨が腫瘍部から外側に広がるサンバーストの形態とは多少異なりますが、骨肉腫の可能性が高いと思います。

余談ですが、2.4億年前のカメに骨肉腫が発見されたという報告があります。興味のある方は、こちらをクリックして下さい。

でき得れば、今回この腫瘤のサンプリングをして骨肉腫か否かを病理学的に確定診断したかったのですが、飼主様の意向で出来ませんでした。

確定診断が出来ない状態で積極的な治療は難しいです。

もし骨肉腫であるなら外科的に断脚すべきか、化学療法(カルボプラチン、ドキソルビシン等)の選択肢があるかと思います。

相手が爬虫類だけに、犬猫の文献的データ―をそのまま使用するのは危険が伴います。

まして、飼主様の治療への理解と了解あっての動物医療です。

ここが、爬虫類の治療限界を感じる所です。

試行錯誤の中で患者にとって最良の治療選択を提供したいと思います。

今後のパセリちゃんの経過を見て行きたいと思います。

パセリちゃん、お疲れ様でした。

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