グリーンイグアナの全身麻酔
4月に入り、狂犬病予防接種や春の健康診断等などでブログに書き込みが遅延いたしました。
早速、気合を入れて継続しますのでよろしくお願い致します。
さて、本日ご紹介しますのはストレスによる尻尾を咬みちぎったグリーンイグアナです。
グリーンイグアナは一般には、性格はおとなしい個体が多いと思います。
しかし、発情期に入りますとかなり凶暴化する個体もあります。
イグアナの口には細かな細い歯がぎっしりと生えそろっており、鞭のごとくしなる尾があります。
保定する側も注意しないと怪我をこうむること然りです。
今回のグリーンイグアナ君は、まさに発情期で、そのストレスの反動のためか、自分の尾を咬みちぎりました。
上写真の黄色丸の部分が離断した尾です。
性格が凶暴化していますので、全身麻酔を実施します。
簡易的にガスマスクで顔面を覆い、寝かせることとしました。
爬虫類の麻酔が一筋縄で決まらない原因の1つは、彼らが長時間の息止めをすることにあります。
結果として、短時間の手術なら大丈夫ですが、1時間以上となるとマスク麻酔では不十分です。
今回のイグアナ君はマスク法では多少まどろんでるかなといった状態までしか維持できませんでした。
十分に寝かせるため、気管挿管を実施することとしました。
顎の骨を折らないよう気を付けて開口器をつけます。
下写真の黄色丸がイグアナの気管開口部です。
この気管開口部からチューブを挿管します。
この個体は通常のイソフルラン単独の麻酔では効き目が浅いので、事前にケタラールを前投与しました。
やっと麻酔がしっかり効いたところで患部をトリミングして縫合しました。
手術に要した時間は、せいぜい15分程ですが、麻酔に費やした時間は1時間以上かかってしまいました。
爬虫類は変温動物ですから、代謝や免疫は温度の影響を受けます。
麻酔の導入・維持・覚醒を確実にするためには体温の保温が欠かせません。
犬猫なら麻酔前の術前検査(血液検査など)はルーチンとして行っておりますが、爬虫類の場合は個体の性格によっては採血は至難の業となり、実施できないことも多いです。
麻酔覚醒に至っては、個体の状態によりますが数時間から12時間に及ぶ場合もあります。
いろんな要因が絡み合って、哺乳類のように正確な麻酔の実施が出来ないわけですが、それでも最善の努力は今後も行っていきます。