インドシナ・ウォータードラゴンという名のトカゲがいます。

タイ、ベトナム、中国南部に分布するトカゲです。

成体の全長は60~90cmに及びます。

平地の水辺の森に棲息しており、半樹上生活を送ります。

最近はペットとして飼育される個体も多いです。

動物性の餌を必要とし、高温多湿の環境を好むため、飼育環境の整備が重要となります。

そんなインドシナ・ウォータードラゴンですが、体調を崩して来院された症例をご紹介します。

インドシナ・ウォータードラゴンのロキ君(6か月令、雄)とズーミーちゃん(6か月令、雌)ですが、2匹揃って食欲不振とのことです。

下写真の左がズミーちゃんで右がロキ君です。

診察台の上においてもあまり動こうとしません。

そして2匹に共通して言えるのは、栄養状態が悪く、脱水状態に陥っていることです。

まずロキ君です。

眼が虚ろで軽度の虚脱状態になっています。

栄養状態がよろしくないため、体色がくすんだグリーンですが、健康な状態なら綺麗な青みがかったグリーンを見せてくれるはずです。

早速、脱水補正のために皮下にリンゲル液を補液します。

拒食症の原因は色々です。

飼育環境が温度・湿度・照明等など不適切な場合。

餌の嗜好性が合わなくて採食を拒否する場合。

何らかの疾患にかかっての食欲不振。

ショップで購入した時点から、拒食の傾向は2匹ともあったようです。

まずは、この状態を少しでも改善するために、最低限のストレスに抑えた強制給餌を自宅でして頂くことと、飼育環境の再チェックをお願いしました。

次にズミーちゃんです。

口を開けるのが辛そうです。

良く見ると口の端には瘡蓋(かさぶた)が何ヶ所もできています。

こんな時は開口させて口腔内のチェックが必要です。

口や歯を傷つけないために、時としてゼムクリップで優しく開口することもあります。

下写真の黄色丸で囲んだ箇所は高度の口内炎と舌炎・潰瘍になっていました。

この疾病を称してマウスロットと言います。

爬虫類は動物性の餌を好むものが多く、マウスやコオロギを餌として与えます。

この時、爬虫類の口のサイズより大きなエサを給餌したり、暴れる餌であると口腔内に傷を負ってしまいます。

傷口から雑菌が入り、口腔内の炎症に至り、マウスロットになってしまいます。

2匹ともに状態は悪いので、今後の慎重な対応が必要と思われます。

抗生剤・消化改善薬・食欲増進剤・消炎剤等を組み合わせて内服させ、食欲を喚起させて経過を見ていきます。

水だけでも1か月以上生き続ける個体もいますから、拒食に陥っても焦って無理に食べさせず、自然と食欲が出てくるのを待つようにして下さい。

爬虫類の拒食症の治療は、非常に奥が深く知識と経験が必要です。

2匹とも早く回復してくれるのを祈ります。

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