ヒョウモントカゲモドキの慢性皮下膿瘍
爬虫類は前方に歩く時は、頭部がまず真っ先に障害物にぶつかって、それから進路を決めて行きます。
つまり鼻先から眼球周辺にかけて外傷(特に擦過傷)を受ける個体は、意外に多いです。
今回ご紹介させて頂くのは、ヒョウモントカゲモドキのこんぶちゃん(6か月齢、雌)です。
こんぶちゃんは9か月前から左側耳周辺に直径5㎜近い腫瘤が出来ました。
腫瘤の大きさは次第に大きくなってきているとのことで来院されました。
下写真黄色丸の箇所がその腫瘤です。
患部が腫瘍なのかそれとも膿瘍なのかを鑑別するために、腫瘤の細胞診を実施しました。
注射針で穿刺して、なかなか注射器に細胞が吸引されないため、腫瘤を鉗子で圧迫しました。
すると中からクリーム状の膿が出て来ました(黄色矢印)。
スライドガラスに塗沫して染色しました。
爬虫類の赤血球は核があります(赤丸)。
黄色丸で囲んだのはマクロファージです。
腫瘍細胞と思しき細胞は見つかりません。
むしろ、青く小さく点状に染まった細菌が前面に認められます。
上の写真から、この腫瘤は膿瘍であることが判明しました。
膿瘍なので、カプセルになってる嚢胞自体を綺麗に切除出来たら良かったのですが、場所がデリケートなところなのでそうはいきません。
患部が耳と目にかかる部位なので、こんぶちゃんはそれなりのストレスを長い期間感じていたかもしれません。
患部の圧迫して、極力全部排膿させました。
あとは、暫く抗生剤の内服を継続して頂きます。