プレーリードッグの腹壁ヘルニア(受難その2)
話は、先回のプレーリー君の腹壁ヘルニア手術後の経過から始まります。
下の写真が術後のものです。
手術後、数日経過したところで傷口をプレーリー君が齧ったとのことで来院されました。
嫌な予感はあったのですが、ステンレスワイヤーで縫合した部位もこの通りです。
エキゾチックアニマルは、ここまでやるかというくらい、気に入らないと傷口を自咬するタイプがいます。
プレーリードッグはまさにその典型だと思います。
早速、患部を洗浄消毒してトリミングし、先回同様ワイヤーでの縫合を行いました。
問題は患部をいかに保護するかに尽きます。
プレーリードッグの強靭な切歯から患部を守る手はないか、とのことで飼主様と検討をして下の写真のような装具をつけました。
厚手のビニール剤で亀の甲羅のごとく頚部から腰部にかけて保護しました。
この装具の問題点は、完全に体を曲げることが出来ませんので、まさに亀そのものの動きしかできません。
本来、動きが俊敏で気をつけないとこちらが咬まれてしまう動物です。
この装具を装着することで、緊張感がなくなり、こちらの意のままに掴んで移動することが出来ます。
ちょっと可愛そうな感じもしますが、プレーリー君のためです。
約2週間我慢してもらい、無事抜糸いたしました。
抜糸後、何日か経過して、またしても治った皮膚を齧ったとのことでプレーリー君がやって来ました。
皮膚癒合が完了してからなので、そんなに酷くはありませんが患部を齧るというよりは舐める感じです。
この状態になりますと再度の縫合は無理と考えました。
患部をウェットな状態に保ち、皮膚欠損部をドレッシング剤(特殊なスポンジ)で保護して肉芽組織の再生を促す治療に切り替えました。
数日おきに来院して頂き、患部を洗浄消毒し、肉芽組織を増生するクリームを塗布し、ドレッシング剤で患部を被覆する治療を継続しました。
勿論、あの装具を装着してです。
その後、2か月経過して何とか皮膚も癒合して装具も不要となりました。
その間の写真も載せると小冊子が出来てしまうほどなので、また次の機会にします。
皮膚が治った完成形が下の写真になります。
結局、自咬症に始まり何度も縫合処置やドレッシング処置を経て完治するに至りましたが、2か月半ほどの日にちを要しました。
プレーリードッグに限らず、エキゾチックアニマルは自咬症対策が非常に難しいと痛感します。
完全な患部の防御に尽きると思いますが、その気質・体型・ライフスタイル等々により、犬・猫のように完成されたものはありません。
今後もきっと試行錯誤を繰り返していくと思いますが、少しでもエキゾチックアニマル治療向上へつながればと思っています。